「画面の中で輝く人」との比較が招くストレス

SNSの利用による大きなデメリットとしてあげられるのは、「画面の中で輝く人」と自分を比較した際に生まれるストレスです。

Facebook等のソーシャルメディアを利用することで、さまざまな利用者の投稿内容を閲覧でき、多くの人の生活を垣間見ることができます。

ここで注意したいのは、その投稿内容が実態とやや乖離かいりがあるという点です。

いくつかの研究から、SNSの場合、投稿者が内容を「盛る」ことが指摘されています(*3)

対面でのコミュニケーションとは異なり、SNSではスマホやPCの画面越しでのコミュニケーションとなります。この際、SNSに掲載する文章や写真によって投稿者の印象が形成されます。

良い印象を持たれたいと思うのは、多くの人に共通するため、投稿者はポジティブな文章や写真を意図的に選択する傾向が強くなります。またネガティブな投稿よりも、ポジティブな投稿のほうが受けが良いという点も、この傾向に拍車をかけると考えられます。

このようにSNSは投稿者がImpression Management(印象管理)を行いやすい媒体であり、どうしても実態よりもきらびやかな投稿が多くなるわけです。

写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです

画面越しのきらびやかな生活を送っている人と自分を比較してしまい、劣等感や嫉妬を感じてしまう。この傾向は年齢、性別、国籍に関係なく、多くの人に共通するものだと考えられます。

このような負の感情は大きなストレスにつながり、幸福度を押し下げる可能性があります。

これはSNSの負の側面だと言えるでしょう。

(*3)Walther, J. B. (2007). Selective self-presentation in computer-mediated communication: Hyperpersonal dimensions of technology, language, and cognition. Computers in Human Behavior, 23, 2538–2557.
Wang, J. L., Wang, H. Z., Gaskin, J., & Hawk, S. (2017). The mediating roles of upward social comparison and self-esteem and the moderating role of social comparison orientation in the association between social networking site usage and subjective well-being. Frontiers in Psychology.

SNSを多く利用する人ほど、幸福度が低下する傾向

SNSの利用にはメリットとデメリットがあるわけですが、果たしてどちらの影響の方が大きいのでしょうか。

この点に関して、オランダのマーストリヒト大学のフィリップ・ヴァーダイン准教授らが28個の既存研究を調査し、その動向を明らかにしました(*4)

その結果を端的に言えば、こうです。

「Facebookに代表されるSNSの過度な利用によって、幸福度が低下することを示す研究が優勢である」

この結果は、SNSの利用ではデメリットの方が大きいことを意味しています。

ちなみに、Facebook、Twitter、Instagramの利用と幸福度の関係を検証した最新の研究によれば、10日間の検証期間内において、毎日これらのSNSを多く利用する人ほど、幸福度が低下する傾向が確認されています(*2)

また、Facebookの利用を1週間やめた場合、幸福度が逆に向上したと指摘する研究も存在しています(*5)

これらの研究を見ると、SNSの使い過ぎは禁物であると言えるでしょう。

(*4)Verduyn, P., Ybarra, O., Résibois, M., Jonides, J., & Kross, E. (2017). Do social network sites enhance or undermine subjective well-being? A critical review. Social Issues and Policy Review, 11, 274–302.
(*5)Tromholt, M., Marie, L., Andsbjerg, K., &Wiking, M. (2015). The Facebook experiment: Does social media affect the quality of our lives?