今は男性の育休や介護の課題についても議論

【白河】御社の女性活躍推進は、JWCの発足がひとつの節目だったんですね。それまでは男女平等の土壌があったとはいえ、意思決定層には女性が少なかった。その点に「本気で」取り組むためにJWCをつくったと。

少子化ジャーナリスト 白河桃子さん(撮影=遠藤素子)

【山口】そうですね。そこからe-ワーク(在宅勤務)や短時間勤務などの制度ができていきました。ただ、課題や求められる施策は時代とともに変わるものです。JWCも発足当時は女性メンバーだけで構成されていましたが、今は男性にも育休や介護などの課題がありますから、男性メンバーも入っています。JWC自体も、「目標達成に向けてがんばる団体」から、「さまざまな事情を持つ人がその課題や解決策を自然体で話し合う場」へと変わってきています。

【白河】日本企業の多くでは、かつて女性は出産前までの短い期間働くということが前提でした。雇用機会均等法を機に、女性総合職が出てきましたが、ライフイベントを越えられず辞めてしまう人も多い。そこで第2フェーズとして、両立支援を手厚くしてきました。御社でも、まずは女性の両立支援から出発して、今では男性にも対象を拡大していると。

撮影=遠藤素子

【山口】特に育児との両立については、事業所に保育所をつくったりもしました。ただ、当社の社員はお客様のビルに常駐して働くケースも少なくありません。そうすると事業所の保育所は利用しにくいので、不公平が生じます。また、多様な生き方を選択する社員が増えていているのが現実です。結婚して育児をする女性だけを対象にするのではなく、女性、育児といった事由に限らず、全社員を対象に継続して働くための阻害要因を少しでも取り除こうと考えました。

そこでベビーシッターをはじめ介護関連、ボランティア休暇など、個々人が自由に利用できる福利厚生制度もつくりました。社内にはワーキングペアレンツ・コミュニティーや介護コミュニティーがあり、活発に情報交換をしながら社員同士で助け合っています。さらに、2021年には就業場所の制限を緩和し、どこから働いてもいいという「新たな働き方」を発表しました。すべて現場の意見を聞きながら、他社の制度も参考にしながら進めています。

ハードワークは緩和されつつある

【白河】働き方についてはいかがですか? 御社ではかなりハードな働き方をされていた時代もあると思うのですが。

【山口】今はフレックスや短時間勤務などもあり、比較的柔軟になっています。しかし、こうした制度は社内では活用できますが、お客様とのプロジェクトなどでは、先方のペースによってはハードな働き方になってしまうこともあるようです。それでも、最近は日本全体の働き方や働く環境がいいほうに変わってきているので、昔に比べれば皆が働きやすくなっているとは思います。