アメリカの軍需産業にとって戦争は「恵みの雨」

アメリカが「戦争を煽っている」と言われても仕方がないような事情が、他にもあります。

アメリカは世界最大の武器輸出国です。

「戦争が起こればアメリカが儲かる」と言われるのは、このあたりが関係しています。

また、アメリカには、軍需産業と結びついた、ネオコンと呼ばれる政治勢力が存在し、今は民主党との結びつきが強いと言われています。

共和党のほうがタカ派のイメージがあるかもしれませんが、実はトランプ政権下では、軍需産業が儲かるような新たな紛争や戦争は発生していません。

ですから、ウクライナで戦争が始まれば、アメリカの軍需産業にとって「恵みの雨」となるのは間違いないのです。

写真=iStock.com/Andrei Naumenka
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ウクライナのゼレンスキー大統領が、アメリカに対して「戦争を煽るな」と言わんばかりの態度を取っているのは、こうした背景があると考えられるのです。

この危機の本質は「天然ガス市場争奪戦」にある

また、アメリカには、ウクライナ危機がビジネスチャンスとなる、もう一つの事情もあります。

それは、脱炭素をめぐる動きです。

いま欧米各国ではCO2排出削減に向けて、脱炭素の取り組みが進んでいます。

その結果、再生可能エネルギーへの投資が拡大し、化石燃料投資が減少しました。

ただ、火力発電がゼロになったわけではありません。CO2排出量が比較的少ないと言われる天然ガス火力の重要性が、より高まっているのです。

それを背景に、ヨーロッパ各国は、ロシア産天然ガスへの依存度を高めています。

ドイツをはじめとするNATO諸国では、天然ガスの供給を、「ノルドストリーム」と呼ばれるロシアからのパイプラインに依存しています。

イギリスの石油会社BPの報告書によると、2020年のドイツの天然ガス輸入量のうち、実に55.2%を、ロシア産天然ガスが占めています。

また現在、「ノルドストリーム2」も完成し、承認待ちの状態にありました。

ところが、ウクライナ危機を受け、ドイツのショルツ首相は、「ノルドストリーム2」の承認をストップすると表明したのです。

今後ウクライナでの戦闘が本格化した場合、ロシアからの天然ガス供給がストップすることが考えられます。

そうなると、ドイツをはじめNATO諸国はたちまち深刻なエネルギー問題に直面してしまいます。