ロシアからの供給ストップは「ビジネスチャンス」
そのため、アメリカはNATO諸国に、アメリカの天然ガスを買うように仕向けています。
また、アメリカは日本に対しても、備蓄する天然ガスをヨーロッパに供給するよう、要請しています。
これも、見方を変えれば、アメリカにとっての「ビジネスチャンス」です。
ヨーロッパにおけるロシア産天然ガスのシェア低下につけいり、割高なアメリカ産天然ガスを売り込む絶好のチャンスだからです。
こうした構造があるため、アメリカには「戦争を煽るメリット」があるのです。
その結果、NATO諸国の足並みの乱れが生まれています。
プーチン大統領の戦略は、まさにこうした「隙」をついた、非常に巧妙なものだと評価できるかもしれません。
コロナ禍によるサプライチェーン問題など、さまざまな要因によって、天然ガス価格は高騰しています。
しかも、ロシアによる軍事行動が開始されたことで、天然ガスの需給はいよいよ逼迫するでしょう。
そうなれば、天然ガスの価格はさらに高騰します。
つまり、プーチン氏が軍事行動を拡大すればするほど、天然ガス価格が吊り上がる可能性があるのです。
もちろん、西側諸国からの経済制裁の一環として、ロシアの天然ガス不買運動は始まっています。
でも不買で困るのはロシアというより、西側諸国でしょう。
従いまして、プーチン大統領にとって、これはかなりの追い風になっています。
戦争が長期化してもロシアはびくともしない
軍事行動を取るロシアに対して、アメリカをはじめ、NATO諸国は「経済制裁」で対抗しています。
経済制裁の中には、政府系金融機関の取引禁止や、アメリカ市場におけるロシア国債の売却禁止など、かなり厳しい内容が含まれます。
しかし、2月24日現在、プーチン大統領個人を対象とした制裁や、世界の銀行決済取引網「国際銀行間通信協会(SWIFT)」からロシアの銀行を排除する制裁については、まだ実行されていないようです。
ただバイデン大統領は、こうした制裁を通じて、ロシア経済を国際金融の枠組みから切り離そうとするでしょう。
こうした措置は、ロシア経済にとって、確実にマイナスです。
ただ、天然ガスをはじめ、エネルギー価格の高騰は、ロシアに利益をもたらします。
ロシアは資源産出国であり、いまも西側諸国にエネルギーを供給しているからです。
天然ガス価格の高騰が、経済制裁のマイナスを相殺することを、プーチン大統領は既に計算済みなのでしょう。
むしろ、戦争が長期化すればするほど、ロシアが儲かる、というパターンも考えられます。
その意味では、プーチン大統領は「危機の長期化」を恐れてはいません。
むしろ望んでいる可能性もあると思います。