歴史的遺産の大半は過酷な労働によって構築された

韓国および韓国の主張に寄り添う勢力は、ユネスコの理念を考えれば、世界遺産に推薦するに当たって「負の歴史」の検討が欠かせないと主張する。

しかし、そもそも強制労働があったかどうかを問い出したら、世界文化遺産の大半は登録から外すしかなくなってしまうだろう。

壮大な規模の歴史的遺産は、その大半が強制労働か、それに近い過酷な労働によって構築されてきた。

世界文化遺産でいえば、例えば「メンフィスとその墓地遺跡」、つまりピラミッド。最近では、奴隷の強制労働ではなく労働者が雇われていたという説が有力だが、あれだけの石を手作業で積み上げる現場に過酷な労働が伴わなかったはずがない。

写真=iStock.com/Anton Aleksenko
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古代ギリシャや古代ローマには多くの奴隷が存在した。むろん、都市の建設に多くの奴隷たちが動員されており、「アテネのアクロポリス」も、「ローマ歴史地区」も、「強制労働」の現場だから「普遍的価値」はないことになる。ましてやローマの「コロッセオ」など、剣闘士奴隷を猛獣と戦わせて市民の娯楽に供した場所。「負の歴史」を考えれば論外だろう。

それは時代を下っても状況は変わらない。「ヴェルサイユの宮殿と庭園」が、フランス絶対主義王政の過酷な収奪によって誕生したのは常識である。もっと身近な例を挙げれば、日本で初めて世界文化遺産に登録された姫路城。当時の築城は石垣の石を運んだり積み上げたりするだけで、何十人、何百人という命が犠牲になるのが当たり前だった。

私が思った違和感の正体

最初に記した違和感の正体はここにある。今日の価値観、それも主として人道的価値観で過去を評価したら、世界中の文化遺産の大半は、その価値を否定するしかなくなってしまう。

文化遺産の価値は「国家の名誉」からも「過去の歴史問題」からも切り離して考えるべきである。「歴史戦」もいいが、そこに文化遺産を巻き込まないでいただきたい。

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