負のスパイラルにはまる危険が高まっている

景気下支えのために、習政権はなりふり構ってはいられない状況を迎えたと考えられる。財政面では国債の発行や地方債の発行を増やさなければならない。債務に依存した経済運営を支えるために、中国人民銀行は追加的な利下げや流動性の供給を行う可能性が高い。

その結果として想定されるのが、ゾンビ企業の延命だ。“灰色のサイ”と呼ばれる債務問題は深刻化するだろう。本来なら共産党政権は債務返済が困難になった不動産デベロッパーなどに資本を注入し、不良債権処理を進めなければならない。

しかし、それが難しい。債務問題を抱える民間企業の救済は、貧富の格差拡大に直面する民衆の不満を膨張させるだろう。不動産バブルが崩壊する中で不良債権処理が遅れれば、景況感悪化は避けられない。やや長めの目線で考えると、拡張的な財政政策と緩和的な金融政策は債務残高を膨張させるだろう。信用リスクは上昇し、経済成長率の低下傾向が鮮明になるという負のスパイラルに中国経済は向かう可能性が高まっている。

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“国進民退”で破綻する民間企業はさらに増える

中国経済の減速傾向は強まり、習政権の経済運営は一段と難しい状況を迎えるだろう。今後の展開によっては、習氏の求心力にマイナスの影響が及ぶ可能性がある。主要先進国は感染再拡大のリスクに留意しつつ“ウィズコロナ”の社会と経済運営を目指している。それとは対照的に、中国のゼロコロナ姿勢は非常に強い。動線寸断は長期化するだろう。それは中国経済の成長にマイナスだ。

また、不動産バブル崩壊は本格化する恐れがある。一部で“国進民退”と呼ばれるように、共産党政権は国有、国営企業に恒大集団など民間デベロッパーの資産を買い取らせようとしているようだ。

懸念されるのが、住宅価格が下落する中で民間企業が資産を売却すれは、不動産市況の悪化に拍車がかかることだ。民間企業が返済資金を確保することは一段と難航し、本格的なデフォルト、あるいは経営破綻は増加する。計算の方法にもよるが中国の国内総生産(GDP)の30%近くを占める不動産関連分野で景況感の悪化は避けられないだろう。