メイセムを乗せた車はすぐに、ふたつ目の収容所に着いた。

看守たちが「拘留センター」と呼ぶその施設は、大きな鉄扉がついた大規模な建物で、さきほどよりも多くの特殊部隊員がまわりを警備していた。メイセムは不気味な廊下を通り抜けていった。一方の壁には、ベールをまとった悲しそうな女性たちの絵。反対側の壁には、ワンピースとハイヒール姿の幸せそうな女性たちの絵が描かれている。

ロビーにやってくると、まずコンピューター・システムによる確認作業が行なわれた。直後、看守たちがメイセムを床に押し倒し、中庭のタイガー・チェアに体を固定し、それから去っていった。

しばらくして戻ってきた看守たちはストラップを外し、メイセムに立つように命じた。「両腕を上げて、そのままの姿勢で数時間じっとしてろ」とひとりが言った。

メイセムは言われたとおり、中庭で両腕を上げたまま突っ立った。

「動いたらどうなるか、わかってるだろうな」と看守は彼女に言った。

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施設の囚人は皆放心状態だった

2時間後、看守はメイセムにたいし、両手を上げた姿勢をもとに戻すように言った。それから、彼女は監房に連れていかれた。一般的な住宅の居間と同じ30平方メートルほどの室内には、20人ほどの女性がおり、2台のカメラが設置されていた。

メイセムの眼には、女性たちが放心状態にあるように見えた。坐っている人も立っている人もみな、ぼんやりと遠くを見つめていた。「わたしは誰にも話しかけなかったし、彼女たちもわたしには話しかけてきませんでした。誰もお互いを信用していなかった」

メイセムの直感は正しかった。

「多くの場合、警察は監房のリーダーを選ぶんです。リーダーは監房を管理し、囚人を見張り、誰かがルールを破ったら看守に知らせる。同房者と喧嘩したり、プロパガンダの勉強を怠ったりしたら告げ口する。監房がどういうふうに機能しているのかまだわからなかったので、わたしはとにかく目立たないようにしました」