プレスリーは合唱団に加わり、ヒゲを剃って旧友や家族、周囲の社会と交流する努力を再開した。療法士と共に心が再び暗闇に覆われた際に取るべき行動をリスト化した。友人や恋人に電話する、ジムに通う、歌う、専門家と話をする……。

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既に何百社ものバイオテクノロジー企業が参入の構えを見せている

「私は疲れ切っていた」と、プレスリーは治療を受ける前の自分を振り返る。「それが突然、解消した。まるで昼と夜のような違いだ」

こうした体験は、柔らかなソファや風景画などが置かれた精神科の快適な診察室ではよくあることだという。ジョンズ・ホプキンズ大学幻覚剤・意識研究センターで療法士サービスの責任者を務めるメアリー・コシマノは、臨床試験のセッションに475回以上参加してきた。

神の腕で休んでいるような安らぎ

拒食症治療のためにシロシビンを使った研究に参加したある被験者は、「神の腕の中で休んでいる」かのような安らぎを覚えた。自分は無価値だと感じ、仕事で誰かと話すのが怖かったという別の被験者は、あるセッションで仕事中の自分の姿が見え、同僚たちが「とても小さく」感じられて彼らを「食べてしまった」。この経験から、職場に戻った彼女は同僚と対等な関係になり、仲間として接することができるようになった。

00年代初めに末期癌患者の治療に携わったUCLAのチャールズ・グロッブ教授(精神医学・生物行動科学)によると、患者の多くは今この瞬間に集中するという新たな能力を身に付けたという。

最初、グロッブの患者の大半は、重度の実存的苦痛(生きることの意義を感じられないことによる苦痛)、無力感、抑鬱、不安に苦しんでいた。しかし、シロシビンを用いると、心の平安が取り戻されて、家族との時間を大切にし、残された日々を充実させようと決意する人が多かった。

しかし、コシマノによると、次のステップも同じくらい重要だ。多くの臨床試験では、セッション終了後、被験者はその経験をレポートに記すものとされている。療法士はその内容に基づいて、セッションでの経験がその人にとってどのような意味を持つのか、その経験を日々の生活にどのように生かせばいいかを見いだす手伝いをする。この作業を怠ると「元の状態に戻ってしまう」と、コシマノは言う。「自己規律を育まなくてはならない」

これらの薬品が臨床の現場で患者を救う未来をつくりたければ、推進派は過去の失敗を繰り返してはならない。医療以外の場で薬を乱用することと、厳重な監督の下で安全に薬を用いることの間に明確な一線を引く必要がある。