デジタル庁は「一元的な管理」を明確に否定

とはいえ、こうした利便性のある活用でも、結果として自治体を越えて利用できる子供の各種データが学習履歴を含め蓄積されていく可能性があることには、変わりはない。

そのこと自体に警戒感を持つ国民も多いからこそ、教育データ利活用ロードマップはSNS等で炎上しているのである。

それゆえに、教育データ利活用ロードマップに関するQ&Aにおいて、デジタル庁は「政府が学習履歴を含めた個人の教育データを一元的に管理することは全く考えておりません」と、データの一元的管理を明確に否定している。

牧島かれんデジタル大臣、山田太郎デジタル政務官も、まず個人情報保護が最優先で、政府による個人の教育データの一元管理をしないとそれぞれに公式のメッセージを発している(※1)

私自身もデジタル庁の作成したQ&Aを基にSNSで発信をしている。

要するに、政府が子供の学習履歴を一元管理もしないし、民間事業者が子供の個人情報に手続きや同意なくアクセスすることもあり得ない。また(教育学的にはとても興味深いことに)児童生徒や学習者の、望まない内面の可視化や個人の選別をしない方針も明言されている。

写真=iStock.com/miya227
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にもかかわらず、教育データ利活用ロードマップに対し、不信や警戒感をあらわにする人は多い。

本稿のねらいは、デジタル庁・文科省等関係省庁を擁護することではなく、教育データ利活用ロードマップ炎上事件は、政府DXの末端にいる私(※2)から見れば、デジタル庁の情報発信戦略のミスという側面が大きいことを指摘する。

政府内で個人情報保護のルール整備や、国が一元管理をしないという重要ルールなどを設定しつつあるのだが、残念なことに国民との大きなコミュニケーションギャップが起きてしまっているのだ。

初期段階でこのように国民の不信を招いてしまったために、今後、とくにデータの所有権は本人の意思のもとで利活用されることや、個人情報保護に関するわかりやすい発信や継続的な対話のプラットフォームを継続することによって、国民の信頼を得ていく必要がある。

※1 牧島かれん大臣(デジタル庁会見記録)、山田太郎デジタル政務官(youtube
※2 筆者は、内閣府・貧困状態の⼦供の⽀援のための教育・福祉等データ連携・活用に向けた研究会の有識者委員として、子供の貧困対策に自治体データを利活用する仕組みの整備について検討している。デジタル庁の大臣・政務官発信と同様に、個人情報保護や子供に関するデータベース・データ連携において先進自治体の事例をもとにアクセス権限を厳格に制限をする、支援の司令塔となるスクールソーシャルワーカーの常勤配置などの前提で、孤立している子供・家族をいかに支援につなげるかの検討を慎重に行っている(「内閣府研究会における検討状況」)。