飛沫感染予防には紅茶の「ちょこちょこ飲み」
ウイルスと細菌の違いをわかっている人は少ないのではないでしょうか。
細菌は自己複製能力を有しますが、ウイルスは生物ではないので、人間や動物の細胞内のみでしか増殖できません。
新型コロナウイルスもウイルスですので、人間の体内、細胞の中に入らない限り増殖できません。
飛沫感染やエアロゾル感染と言われるように、感染した人の唾液がほかの人の体内に入ることで新型コロナウイルスが増殖し、他の人に感染させてしまいます。
つまり、唾液中のウイルスを不活化する、あるいは体内に入れないようにすることが、最大の感染防止策になるのです。
「紅茶」を飲むことで、新型コロナウイルス感染者の口腔内でウイルスが減少すれば、飛沫による人から人への感染リスクを低下させることが期待できます。
家庭で飲むのはもちろん、飲食店で食事をする際に紅茶を飲むようにすると、感染リスクを低減させることができるでしょう。
「紅茶を飲むと、ポリフェノールが口腔内で10分程度は残る」という研究結果があります。
ですので、一度にたくさんの量を飲むのではなく、少しずつでもいいので飲む頻度を上げる「ちょこちょこ飲み」が感染対策としてはより有効といえるでしょう。
また、紅茶にはカフェインが含まれていますが、カフェインレスの紅茶でも、効果は変わらないことが確認されています。カフェインが苦手な人や妊産婦さん、小さいお子さんは、カフェインレスの紅茶を選ぶといいでしょう。
今後は感染者への実証実験も検討
新型コロナウイルスの感染対策を究明することは、今や世界中の研究者たちの社会的使命といえます。我々も少しでも早く成果を届けられるよう、スピード感を持って研究に臨みました。
今回の実験には、国立感染症研究所から分与していただいた新型コロナウイルスを使用しました。
研究室で培養して実験を行っていたのですが、医療従事者の方を優先しなければならないため、防護服などを入手するのにもとても苦労しました。万が一にも研究者が感染することがないよう、最大限の注意を払いながら実験を行わねばならず、精神的にタフさを求められました。
実験結果はイギリスの学術誌『Letters in Applied Microbiology』2022年1号に掲載され、世界中から大きな反響がありました。
しかし、実験はこれで終わりではありません。
今分かっていることは、「夾雑物(異物)がほとんどない条件下で紅茶がウイルスの感染力を低下させる」までです。次のステップとして、唾液中でも同様に紅茶がコロナウイルスの感染力を低減するのか、新型コロナウイルスに感染した人の唾液中でも、紅茶がウイルスの感染力を低減するのかを確認していく必要があります。実際に新型コロナウイルスに感染した人、発症した人などに紅茶を飲んでいただき、唾液中のウイルスがどれだけ減少するかという実証実験を検討しています。
第6波が猛威を奮っていますが、世界と比べると感染者が比較的少ない日本国内での実証実験は難しいかもしれません。海外の研究者との共同実験も視野に入れています。