紅茶に含まれるポリフェノールが新型コロナの感染力を減少させる

先に結論からお話しすると、紅茶の効果についてわかったことは、大きく分けて2点あります。

1点目は、市販のティーバッグでいれた紅茶で新型コロナウイルスを処理すると、わずか10秒でウイルス感染力価(細胞に感染するウイルス数の指標)が減少すること。2点目は、通常の飲用濃度よりも低い濃度の紅茶でも新型コロナウイルス感染力価は減少するということです。

カップにお湯でティーバッグ
写真=iStock.com/AndreyCherkasov
※写真はイメージです

次に、どのような実験を行ったのかについて説明しましょう。

今回調べたのは、①それぞれ異なる茶ポリフェノールの水溶液20種、②粉末緑茶溶液、③粉末紅茶溶液、④紅茶のティーバッグ抽出液――の4種類の溶液です。それぞれを新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)と一定時間作用させることで、抗ウイルス活性を調べました。

抗ウイルス効果が認められたのは、②粉末緑茶溶液(通常の飲用濃度の1/5)、③粉末紅茶溶液(同1/3)、④紅茶ティーバッグ抽出液(同1/2)の3つの溶液でした。いずれも、新型コロナウイルスの感染力価を減少させました。このことから、濃度の低い緑茶や紅茶でもウイルスの感染力価を減少させることがわかりました。

一方で、①20種類の「茶ポリフェノール溶液」では、新型コロナウイルスの感染力価はあまり低下しませんでした。正直、この結果は我々にとって予想外でした。20種類のポリフェノールの中で1番強い抗ウイルス活性を示すものを見つけようと考えていたからです。

①以外の溶液でウイルス感染力価が減少した理由としては、それぞれ①のポリフェノール単体よりも、②、③、④のように複数のポリフェノールが存在することで、より強い効果を発揮したためと考えられます。漢方薬と同じ考え方で、精製品よりも天然のままの方が高い効能を示すことを再認識させられました。

わずか10秒でウイルスの感染力が10万分の1に激減

次に、②、③、④を新型コロナウイルスと作用させる時間を変えて評価しました。溶液の温度は、いずれも25℃としました。

図表1がその結果です。

粉末緑茶溶液、粉末紅茶溶液、ティーバッグ抽出液をそれぞれ新型コロナウイルスに継続的に作用させたときの感染力価(図表=大阪大学・大阪府立大学・三井農林の共同研究より)
粉末緑茶溶液、粉末紅茶溶液、ティーバッグ抽出液をそれぞれ新型コロナウイルスに継続的に作用させたときの感染力価(図表=大阪大学・大阪府立大学・三井農林の共同研究より)

左に示した青い棒は、何も作用させなかった時に新型コロナウイルスの感染力価が1mLあたり107あったことを示しています。緑の棒は粉末緑茶溶液とウイルスを30分作用させた後に残っていたウイルスの感染力価を示しています。茶色と焦茶色はそれぞれ粉末紅茶溶液と紅茶ティーバッグ抽出液と新型コロナウイルスを10秒、30秒、1分、5分作用させた後に残っていたウイルスの感染力価を示しています。

粉末緑茶溶液では、新型コロナウイルスの感染力価を減少させる、つまり、感染力を持つウイルスの数を10万分の1まで減少させるのに10分間必要でした。それに対して、粉末紅茶溶液と紅茶ティーバッグ抽出液では、共にわずか10秒しかかかりませんでした。

これが「わずか10秒ほどで新型コロナウイルスを不活化する」という根拠です。

紅茶を飲むことで免疫力がアップする

ところで、感染症対策としては免疫力を高めることも重要です。

紅茶を継続的に飲むことで、ウイルスに侵された細胞を攻撃するNK(ナチュラルキラー)細胞の活性が高まり、唾液中の分泌型の抗体(SlgA)濃度が増加する、つまり免疫力が高まるという研究結果があります。

20歳~60歳の72人を対象とした臨床試験では、1日3杯の紅茶を12週間継続して飲み続けたところ、風邪をひきにくくなり、ひいても重症化しにくくなったとの報告もあります。

免疫力アップの観点からも、紅茶は注目されています。