総合商社の動きが日本に与えるインパクト

2030年度の電源構成全体に占める風力の割合が低い背景の一つには、洋上風力発電の技術的な課題があるだろう。洋上風力発電の技術開発を急ぎコスト低下を実現することは、わが国が2030年度に温室効果ガスの排出量の46%削減(2013年度比)、および2050年のカーボンニュートラル実現を目指すために決定的に重要だ。そのために、わが国の総合商社などが洋上風力発電により積極的に、より大規模に取り組むことがどうしても必要になる。

写真=iStock.com/PARETO
※写真はイメージです

このように考えると、総合商社各社の再生可能エネルギー事業の強化がわが国のエネルギー政策に与えるインパクトはより大きくなるだろう。三菱商事と丸紅以外では伊藤忠商事がドイツ最大級の洋上風力発電事業であるブーテンディーク洋上風力発電所の権益を取得した。三井物産は洋上風力発電事業に加えて設備の点検やメンテナンス事業に進出し、住友商事も国内外で洋上風力発電事業に取り組んでいる。その上で総合商社各社が電力会社や事業会社との提携を増やして洋上風力由来の電力供給網を整備することがわが国のエネルギー政策の転換に欠かせない。

新たな市場創出が大チャンスとなる

今後の展開として期待が高まるのが、総合商社による電力市場の創造だ。わが国の総合商社は、国内外のヒト、モノ、カネの新しい結合を実現することによって付加価値を生み出してきた。その強みの発揮によって、海外の洋上風力発電装置メーカーと国内の事業会社が合弁事業を行う機会を増やしたり、洋上風力を用いて発電された電力の送電や蓄電のシステムを生み出したりすることは可能だろう。

その上で、総合商社が電力需要者により安定的、かつ効率的に再生可能エネルギー由来の電力を供給するシステムを確立することは、わが国に大きなメリットをもたらす。それは、総合商社による国内外での新しい電力市場の創造にほかならない。

足許では、欧州委員会が持続可能な経済活動の分類(タクソノミー)において、天然ガスと原子力を一定の条件の下でグリーンな投資対象とみなす方針をEU加盟国に示した。洋上風力など再生可能エネルギー由来の電力供給の増加を目指す欧州各国にとっても、技術的なハードルや風況変化などの影響は大きいようだ。その状況はわが国にとってチャンスだ。