コネ社会ではあったが清潔感は保っておいたほうがいい

とくにきらびやかなのは、宮廷の護衛・侍従官(執金吾しつきんご侍中郎じちゅうろう)のたぐいである。かの光武帝こうぶていも、若いころは執金吾になることを夢みている(*26)

かりに15歳で小役人、20歳で中央官僚、30歳で侍中郎、40歳で城主ともなれば、女性から大モテである(*27)。当時はコネ社会ゆえ、有力者の子弟なら、外見を問わず、かなり上位にゆくこともできるが、清潔感は保っておいたほうがよい。

護衛官にはとうぜん武芸の心得もなくてはならないが、太平の世においては武功を立てる機会も少ない。そのため漢代には実戦のかわりに、投石いしなげ抜拒ひっこぬき・格闘技(手搏しゅはく)などの競技をおこなわせ、その腕前を昇進の条件とすることもあった(*28)

(註)
(*1)『荘子』外篇秋水篇。
(*2)『史記』巻30平準書。
(*3)『漢書』巻38高五王伝論賛。
(*4)林俊雄「車の起源と発展」(『馬が語る古代東アジア世界史』汲古書院、2018年、3~38頁)。車馬にかんしては岡村秀典『東アジア古代の車社会史』(臨川書店、2021年、133~274頁)も参照。
(*5)『史記』巻30平準書、『漢書』巻24食貨志下。
(*6)張家山漢簡「二年律令」襍律(第184簡)、堀敏一『中国古代の身分制』(汲古書院、1987年、187~223頁)。
(*7)David Reich, Who We Are and How We Got Here: Ancient DNA and the New Science of the Human Past(Oxford: Oxford University Press, 2018), 1-368.
(*8)Li Wang et al., Genetic Structure of a 2500-Year-Old Human Population in China and Its Spatiotemporal Changes, Molecular Biology and Evolution 17-9 (September 2000),1396-1400.
(*9)『玉台新詠』巻1古楽府詩6首「日出東南隅行」。
(*10)『世説新語』容止篇。
(*11)『初学記』巻第19人部下美丈夫引臧榮緒『晋書』。
(*12)『後漢書』巻53周燮列伝、『後漢書』巻34梁統列伝付梁冀列伝、『呂氏春秋』巻第14遇合篇。
(*13)張競『美女とは何か 日中美人の文化史』(角川書店、2007年、9~28頁)。
(*14)『琱玉集』醜人篇引『晋抄』。
(*15)『荘子』内篇徳充符篇。
(*16)『九家晋書輯本』引臧榮緒『晋書』巻7王戎伝。
(*17)『琱玉集』肥人篇引王隠『晋書』。『太平御覧』巻378人事部19肥引『語林』にほぼ同文。
(*18)『列子』黄帝篇。
(*19)『三国志』巻48呉書三嗣主伝孫晧伝注引干宝『晋紀』。
(*20)『後漢書』巻26馮勤列伝。
(*21)渡辺信一郎『天空の玉座 中国古代帝国の朝政と儀礼』(柏書房、1996年、18~104頁)。
(*22)『三国志』巻13魏書王肅列伝。
(*23)『史記』巻112平津侯列伝、『東観漢記校注』巻14呉良伝、『漢官六種』所収衛宏『漢旧儀』。
(*24)『史記』巻55留侯世家太史公曰、『史記』巻67仲尼弟子列伝。
(*25)『荘子』内篇徳充符篇、『呂氏春秋』巻14孝行覧遇合篇。
(*26)『後漢書』巻10皇后紀上。
(*27)『玉台新詠』巻1古楽府。
(*28)『漢書』巻70甘延寿伝、顔師古注引孟康曰。

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