加えて中国も、「2060年カーボンニュートラル」を掲げる中で、石炭火力からLNGへの移行を行っている。元々のエネルギー需要の多さも相まって、2021年の中国のLNG輸入量は日本を抜いて世界最大のLNG輸入国になる見通しとなった。
このように世界的にLNGの重要度は高まり、欧州ではロシアがLNG供給を絞るなどした結果、電力危機が発生した。LNG価格は一気に高騰し、他の化石燃料の価格にも影響を及ぼすことになり、中国では石炭の価格上昇と供給不足を背景に電力危機が生じた。また世界的な原油高にもつながる格好となった。
話を日本に戻す。先述した通り、日本は電力の4割弱をLNG火力で賄っている。このLNGの部分に何かしら不具合が生じた場合に、日本は電力危機に陥るといってもいい。
それはもちろん、政府も各電力会社も重々承知している。2020年冬の経験も踏まえて、LNG調達を強化しており、最新(12月5日時点)の在庫は冬季に向け積み上げ傾向にある。
この数字は過去4年間と比較して最高水準を維持している。一見、問題ないように見える。しかし、ここで思わぬ問題が明るみに出た。
4電力で生じた電力事情の悪化
事の発端は、11月18日に開催された政府の委員会「電力・ガス基本政策小委員会」での報告だ。そこで北陸電力、中国電力、四国電力、九州電力の4電力において燃料制約という措置が複数回にわたって講じられたことが明らかとなった。
燃料制約とは、燃料の在庫切れなどが起きる恐れが高まる場合、その燃料を使用する火力発電の出力を落とすことを指す極めてイレギュラーな対応だ。この燃料制約が11月は頻発した。
原因は、北陸電力、中国電力、四国電力、九州電力それぞれにおいて異なるが、各社共通しているのは、想定を超える電力の消費があった点だ。九州電力と中国電力は、10月前半の想定外の高気温を上げた。原因は想定外の冷房使用の増加と見られる。
加えて、九州電力と中国電力は、複数の石炭火力発電所が故障による運転停止の状態で、結果としてLNGなどの消費量が増加した。いずれにしても各社とも、燃料の在庫切れに陥る恐れがあったため、LNG火力や石油火力の出力を大幅に落とす対応をとった。