「戦後最小の野党第1党」に政権を任せる不安
もちろん、だからといって「野党は良い結果を出した」と安易に言うことはできない。世間的には選挙は結局、獲得議席によって評価されるものだからだ。
立憲民主党が最後の最後で失速したのは、衆院選1週間前の参院静岡補選でも勝利し、政権交代の可能性が本当に視野に入り始めたことで、これまで「自民党にお灸を据える」感覚で野党に投票していた有権者の中に「政権を任せても大丈夫か」という不安が、急速に広まったこともあったのではないかとみている。
確かに「戦後最小の野党第1党」が、次の選挙でいきなり政権政党になるというのは、実際に身の丈を超えていたのかもしれない。枝野氏は、結党当時の理念を可能な限り保つ形で国民民主党など他野党との「合流」を果たして党の規模を拡大し、さらに共産党などとの連携によって、政権選択の「構え」を作ることには成功した。
しかし、例えば地方議員の数や支部の態勢を含め「最後の1票」を積み上げる組織としての地力、チーム力が、老舗の自民党に比べ圧倒的に足りなかったことは、選挙結果を分析する以前の問題として認識されるべきだろう。
「安倍政治と戦う」旗印を失う野党の立ち回り方
前述してきたように、立憲民主党は選挙結果について過度に「惨敗」感を持つ必要はないと思う。だが、選挙結果が示した党の課題には、真摯に向き合う必要があると考えている。少なくともそれは「野党共闘の是非」といった、責任を他者に求めるべきものではない。最大の敗因も今後の課題も、党そのもの、つまり「地力の不足」にあることから目をそらしてはいけないと思う。
さて、来たる2022年は、こうした前提の下に、これまでとは違う状況の中で政治が動いていくことになる。岸田政権は立憲政治を破壊した「安倍政治」を、きちんと後始末し、夏の参院選に臨むことができるのか。執行部が交代した立憲民主党はじめ共闘野党は「安倍政治と戦う」旗印を失うかもしれない状況で、新たにどのように自民党と対峙していくのか。興味深く見守りたい。