たとえば二人以上の見知らぬ人間が見通しのきく場所で近距離にいれば、自然と互いを観察することになるだろう。そして相手が〈好意シグナル〉を発しているのか、あるいは〈敵意シグナル〉を発しているのか、あなたの脳は自動的に判断する。

好意と敵意のシグナルの使い分け

とはいえ、たいてい判断は「普通」止まりだ。人の外見や態度はノーマルである場合がほとんどで、その相手が自分にとって脅威でなく、重要人物でもないと判断すれば、脳はその場かぎりでその人の情報を忘れることになっている。

それはいわばニューヨークでタクシーを拾うようなもの。通りには何十台ものタクシーが走っているが、人は空車のライトがついているか消えているかしか見ておらず、空車でないタクシーのことはすぐに忘れる。

しかし、なかには特別に人を引きつける人もいる。読者のみなさんも、これまでバーやナイトクラブに同性の友だちと繰り出し、初対面の異性を引きつける魅力をそなえている人を見たこともあれば、存在にさえ気づいてもらえない人を見たこともあるはずだ。

もちろん、スタイルがいいから目立っていた人もいただろうし、見るからにお金をもっていそうで異性を引きつけていた人もいただろう。しかし実際には、大半の人が〈好意シグナル〉を発したからこそ、人気者になっている。〈好意シグナル〉を発した結果、この人と親しくなりたいと相手に思わせているのだ。

相手に「好意シグナル」を送る3つのポイント

では、まだ言葉をかわす関係ではないときに「態度」や「しぐさ」でメッセージを伝え、好感をもってもらい、一晩であろうと一生涯であろうと親密になるための土台を築くには、どんなシグナルを送ればいいのだろうか。

そうしたシグナルは無数にあるが、カギを握る重要なシグナルは三つに絞られる。その三大シグナルとは、「眉をさっと上げる」、「頭を傾ける」、そして作り笑いではなく「本物の笑みを浮かべる」ことだ(そう、人間の脳は作り笑いと本物の笑顔を見分けられる!)。

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1 眉をさっと上げて目を見開く

これは、眉をすばやく上げて目を見開く動きのことだ。六分の一秒ほどの短時間で行えるため、言葉を使わずに〈好意シグナル〉を送りたいときに便利だ。

知らない人に近づいていくとき、眉をさっと上げて見せれば、「私は怪しい者ではありませんよ」というメッセージを送ることができる。初対面の相手と1.8~1.5メートルほどの距離に近づくと、脳はこのシグナルをさがす。

相手からシグナルが送られ、こちらも同じシグナルを送り返せば、言葉を使わずに「私はあなたの敵ではありませんから、怖がったり避けたりする必要はありません」と、互いに知らせることができる。