親友は自分と同じように考え行動する

解決すべき問題に直面したときや、選択を迫られたとき、あるいは急いで新しい仕事を探さざるを得なくなったときに、友人や家族、信頼できる仕事仲間に相談したくなるのは当然だ。実際、大半の人はそうするだろう。彼らは私たちのことをよく知っていて、手助けしようという気持ちも強い。

しかし、グラノヴェッターが指摘するように、彼らが何かしら役に立つ情報を持っている可能性や、あなたの知らない情報をもたらす可能性は低い。さらに、あなたの親しい交流関係に含まれる人々が、揃って同じ情報や助言をもたらす確率はかなり高い。親密な人間関係は、クラスタの中で人脈が重なりがちだ。

それに対し、弱いつながりはそれぞれが異なるグループに属しているため、人脈にもばらつきがある。彼らをとおして自分の内輪のグループではない人とつながって、いつもとは異なる情報に触れることができる。つまり、困難な問題解決に必要な新しい情報は、弱いつながりからもたらされることが多い。

アイデアの革新性も「弱い紐帯」がもたらす

弱いつながりが、強いつながりより強力な情報源になるのは、就職活動だけではない。グラノヴェッターの論文に刺激を受けた研究者たちが、弱いつながりが価値のある新しい情報や機会をもたらすさまざまなケースを検証している。

デューク大学のマーティン・ルーフ教授は、起業家が強いつながりと弱いつながりをどのように利用しているかと、彼らのイノベーションに与える影響を調べた(※3)

ルーフは新しいビジネスを立ち上げている起業家700人以上を対象に、アイデアをもたらした源、チームの構成、助言を求めた相手やパートナー、特許の出願、事業のアイデアの革新性に関するデータを収集した。特に注目したのは、チームで考えたアイデアの源と、それらのアイデアの革新性だ。

まず、つながりの強さを判断するために、アイデアの源を(1)家族や友人――強いつながり――との議論、(2)仕事仲間や顧客、供給業者――弱いつながり――との議論、(3)メディアや業界、既存の競争相手の議論の観察、の3つに分類した(3つ目は情報が一方通行になるため、ルーフは「有向のつながり」と呼んでいる)。

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革新性については、客観的な基準として特許出願と商標登録の数を用い、主観的には、革新性に関する長期的な研究と起業家チームのアイデアを比較検討した。

これらのデータを解析したところ、弱いつながりからアイデアを得たチームは、客観的な基準でも主観的な比較でも、より革新的だった。特許出願と商標登録の数が多いということは、アイデアの独創性が高く、知的所有権の保護が必要になる。そして、さまざまな角度から見て革新性が高いということは、ビジネスモデルとして革新的な要素になる。

「弱いつながりは、強いつながりに比べて、まったく異なるところから生まれたアイデアを結びつけようとする試みが増えるとともに、既存の社会関係への適応を要求される場面が少ない」と、ルーフは述べている(※4)

※3.Martin Ruef, “Strong Ties, Weak Ties, and Islands: Structural and Cultural Predictors of Organizational Innovation”, Industrial and Corporate Change 11, no.3(2002):427―449
※4.Mary Petrusewicz, “Note to Entrepreneurs: Meet New People”, Stanford Report, January 21, 2004