みじめな気持ちが真の強さを生み出す

彼女のプレゼン内容にも驚かされたのですが、さらに衝撃を受けたのが、審査員の20代の男性のアドバイスです。

彼は東大入学後、半年で退学してMITに行った経歴の持ち主で、彼女に対して2つのアドバイスを行っていました。

1つがプログラミングを勉強すること。これからは、プログラミングができないと何もできないからというのが理由でした。

もう1つが、自分が本当にみじめになる場に身を置くこと。彼はMITに留学して、トップ10%の成績をとったけれども、さらに上を目指すために、トップ1%の人と付き合うようにしたそうです。そうしたら、あまりの実力差に、本当に自分がみじめな気持ちになったと言います。

日本にいると、日本全体のレベルが下がっていることもあり、優秀な人ならめったにみじめな思いをすることはありません。だからこそ、あえて自分がみじめになる経験をするためにアメリカに行き、トップ・オブ・トップの人たちの中に身を置くことをアドバイスしていました。

こうした優秀な日本人がアメリカのMITなどの名門校に行くようになると、みじめな日本は今以上にみじめになるでしょうが、それは仕方がありません。そういう時代なのです。

コミッショナー特別表彰を受けたエンゼルスの大谷翔平=2021年10月26日、アメリカ・ヒューストン(写真=時事通信フォト)

これから起きることは、すでに見え始めていて、スポーツの世界を見れば、野球なら大谷翔平選手が大リーグに行き、大リーグのトップ・オブ・トップになろうと挑んでいます。サッカーなら、久保建英選手が10歳でスペインに渡り、現在もスペインリーグで挑戦を続けています。それ以外のスポーツでも、若い選手たちが次々に挑戦の場を求めてアメリカやヨーロッパ各国に行っています。

これと同じことがスポーツ以外の世界でも実は起き始めており、おそらく日本のトップ数%の若い人材はすでに欧米に行っている、あるいは行こうとしているのではないでしょうか。

MITに行くような人は英語が話せるでしょうが、大谷選手やダルビッシュ有選手などは、専属の通訳をつけています。それは専属の通訳を雇えるほどお金があるからです。

スマートフォンの通訳機能が飛躍的に向上し、通訳がいらなくなれば、通訳を雇えないクラスの人たちも欧米諸国に向かうでしょう。なぜなら、言葉の問題がなくなれば、ビジネスにおいても欧米のほうが活躍できる可能性が高いからです。生産性が低く、経済が成長しない日本にいるよりも、はるかに大きな可能性があります。

日本も企業はずいぶん前から欧米に進出しています。企業に続いて個人も欧米に行くようになれば、日本はさらに空洞化が進みます。

日本人が欧米を目指すように、アジア諸国の若い優秀な人材が日本を目指してくれれば、日本の空洞化をある程度食い止められるのですが、残念ながら目指してもらえていません。理由は、日本に魅力がないからなのでしょう。