AIが子どもの顔を認識

こうした卒業アルバム制作の救世主となっているのがAI技術だ。エグゼックの卒業アルバム作成システム「アルバムスクラム」は、精度の高い顔認証技術を活用し、子ども一人ひとりが写っている枚数を自動カウントするほか、どの程度の大きさで写っているかをも点数化して表示する。豆粒のように小さく写っている子どもと、最前列で大きく写っている子どもで、写っている枚数に変化をつけることが簡単にできるようになっている。

本格リリースは2020年4月。コロナ禍初期に重なったが、初年度は無償提供を行ったこともあり、100以上の写真館を通じ、300校以上がアルバムスクラムを活用して卒業アルバムの制作を行った。山中さんは「先生方からは、『作業時間を半分近く減らせた』『以前は6年の担任全員で何度も集まって作業をしていたが、集まる必要がなくなった』といった声が上がっています」と話す。

顔認証の精度の高さにも、驚きの声が上がっているという。

「ここは開発段階でもこだわった部分です。小さい時の姿も成長した姿も、かなりの精度で同じ子どもだと認識できます。コロナ禍では、マスク姿の認識性能も重要です。実際、自分の息子の小学校1年生から6年生までの運動会の写真を取り込んでテストしてみたのですが、マスクをしているもの、横を向いているもの、さらには顔を歪めているものや豆粒程度の小さな顔でも検出されて、自社製品ながら驚きました」と山中さんは語る。「実際、利用した先生からは『どの子が何回写っているかというカウントが正確で驚いた』と言われているようです」

写真提供=エグゼック
AIによる顔認証で、一人ひとりが何枚の写真に写っているかがすぐにわかる

利用数は昨年の2.5倍に

口コミに加え、2021年3月には、アルバムスクラムを使用した千葉県の小学校の事例が、文部科学省がまとめた「全国の学校における働き方改革事例集」に紹介されたこともあり、利用する学校が増加。今年度は現時点で昨年度に比べて2.5倍程度の利用者の伸びを見せているという。

中には、小学校の総合学習の時間を利用し、授業の一環として子どもたちが卒業アルバムの写真選定をした学校もある。AIの最新技術を利用しながら身近な題材で授業ができ、教員にも子どもたちにも好評だった。自分たちで選んだ写真が卒業アルバムとして形になるのも最高の体験だ。今年度も、東京の学校から同様の依頼が来ているという。

卒業アルバム制作のデジタル化は、教員や保護者だけでなく、アルバム制作を請け負う写真館やアルバム製本メーカーにとっても恩恵がある。

「もともとアルバムスクラムの開発は、写真館やアルバム製本メーカーからの要望で始まったんですよ」(山中さん)

写真提供=エグゼック
赤い丸の数字は写っている写真の枚数、青い丸の数字は、写っている写真の大きさを指数化して掛け合わせたもの