曖昧なままに維持されてきた死刑制度

刑事訴訟法には「死刑判決確定後6カ月以内に、法務大臣が執行を命令しなければならない」と書いてあるけど、実際は6カ月以内に執行されるケースはほとんどありません。いつ誰に死刑を執行するのか、誰がどのように決めているのか……法務省の検討内容は表に出てこないので闇に包まれたまま。

執行は当日朝に死刑囚本人にしか知らされません。1998年に執行の日時と件数を発表するまでは執行の事実も公表されませんでした。執行者の氏名が公表されるようになったのは2007年からです。

誰が執行するのか細かい規定がない。支援者やジャーナリストが死刑囚と接触することもできない……。調べれば調べるほど、非常に曖昧なまま維持されてきた制度だと感じるようになりました。

こうした密行主義も、日本の死刑制度がEUなどの国際社会から非難される一因になっています。

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死刑執行のプロセスや関係者の意見もオープンにするアメリカ

——現在、主要先進国で死刑執行を行っているのは、日本とアメリカの一部の州だけですが、アメリカの死刑制度はどうですか?

アメリカでは、死刑事件に関しては「スーパー・デュー・プロセス」という極めて慎重な手続きをとる仕組みになっていて、死刑執行までのプロセスが細かく公開されている。死刑囚との交流もできる。私もアメリカの死刑囚にインタビューした経験があります。死刑執行には、家族や被害者遺族、死刑囚が指名した知人に加え、希望するジャーナリストも立ち合える。

アメリカの死刑制度を調べていくなかで、400件以上の死刑執行に立ち合ったジャーナリストがいると知りました。彼は、死刑制度に賛成の立場でした。その上で「きちんと法の下に執行されているか見届けるのが自分たちジャーナリストの義務なんだ。もしもひどい殺され方をしたり、間違いが起きたりしたときに正すのが自分たちの仕事だ」と語ってくれました。

20年ほど前に見たアメリカのテレビ番組では、刑務所長が「死刑を執行したら、部屋の掃除をしてまた新しい死刑囚を迎えるだけですよ。こんなこといつまで続けるんでしょうね」と本音を吐露していました。ほかにも執行の前に死刑囚の手を握ったエピソードや、自分のメガネを外すのが死刑執行の合図だったということも、証言していました。

——日本では絶対出てこない話ですね。

そうなんです。そうした現場の実態を国民が共有した上で、死刑を続けるかどうかを選択すべきだと思うんですよ。