世界の消費者に鮮烈な“サムスン体験”を実感してほしい

メタバースが実現した場合、わたしたちの生活はどう変わるだろう。例えば、コンタクトレンズやメガネに仮想空間を投影する機能が実装される。また、一日中イヤホンを装着してメタバース空間と実社会の両面で生活する人が増えるだろう。つまり、パソコンやスマートフォンがウェアラブル端末に置き換えられる可能性が高まる。デバイスのデザイン、重量、装着感、バッテリーの駆動時間の長期化などあらゆる面でメタバースは既存のITデバイスとデジタル家電などの分野でイノベーションを触発する。

そうした展開を見越して、サムスン電子はスマホと家電を統合することによって新しいIoTデバイスなどを提供し、世界の消費者に鮮烈な“サムスン体験”を実感してもらいたい。それはサムスン電子がメタバース社会を支えるITデバイスの開発を主導し、世界的なシェアをいち早く手に入れるために欠かせない要素だ。

新技術でTSMCからシェア奪還を狙う

サムスン電子は、メモリ半導体やディスプレイ事業を“ディスプレイ・ソリューション部門(DS)”として運営し、事業体制はSETとDSの2部門に移行する。部門数の削減によってサムスン電子は意思決定スピードを速め、世界トップのファウンドリである台湾積体電路製造(TSMC)とのシェアを縮めたい。

10月にサムスン電子は、2022年上期に次世代の回路線幅3ナノメートル(ナノは10億分の1)のロジック半導体の量産体制を目指すと発表した。それに加えてサムスン電子は、3ナノのロジック半導体製造に“ゲート・オール・アラウンド(GAA)”と呼ばれる新しい半導体製造技術を用いると発表した。

ゲートとは電流を制御する電極を指す。従来の技術では上左右の3面に電極が設けられてきたが、GAAでは上下左右に電極が設けられる。GAAはチップの小型化と消費電力性能の向上につながると期待されている。サムスン電子はGAA技術の実装にシェア奪還をかけているといっても過言ではない。なお、韓国特許庁によるとTSMCはGAA関連の特許出願数で世界トップだ。