新たなIT産業のために組織を大胆に改革
韓国の有力IT企業であるサムスン電子は大胆な構造改革を発表した。改革のポイントは、意思決定のスピードアップを目指す組織改革だ。今回の措置で、サムスン電子は3部門体制から2部門体制に移行する。2部門のトップも交代し、権限移譲など事業運営の迅速化を図る意図があるようだ。
サムスン電子は、“メタバース”など新しいコンセプトに基づいたビジネスの実現を目指し、ITデバイスの創造や次世代の半導体製造技術の実現を加速させたいだろう。すでに米中ではIT先端企業などがメタバースや自動車の電動化への取り組みを強化している。世界経済の環境変化が加速する状況下、事業運営の効率化や意思決定スピードの向上を目指してサムスン電子がより踏み込んだ構造改革に着手する展開も考えられる。
サムスン電子には、過去の成功体験に浸る発想がない。その姿勢にわが国企業が学ぶことは多い。重要なことは常に新しい発想の実現を目指すことだ。そのために本邦企業は、世界経済の最先端分野にヒト・モノ・カネを再配分し、成長を追求する体制を目指さなければならない。
サムスン電子がスマホ・家電部門を統合した意味
サムスン電子は、スマートフォンなどを生産する“ITモバイル、通信部門”とテレビなどを手掛ける“家電”部門を統合し、“最終製品部門(サムスン電子の発表ではSET部門と称されている)”が設置される。SET部門設置の目的の一つは“メタバース”への対応強化だろう。
メタバースは、仮想空間を意味する。メタバースに関する技術の実用化とともに、わたしたちは“アバター(ユーザーの分身)”として仮想空間に参加し、ゲームやビジネス、買い物などさまざまな活動を体験するようになるだろう。足許では、世界全体でメタバースに取り組む企業が急速に増えている。米エピックゲームズやエヌビディアなどはその代表的な企業だ。
主要投資家の間でもメタバースは世界経済の新たな成長分野との期待が急速に増えている。その一方で、法整備などの課題もある。総合的に考えると、いち早くメタバースのビジネスモデルを確立し、モノやサービスを提供することが国際規格の策定を含めた先行者利得の確保に欠かせない。