日本人にとっての良い台湾は台湾人から笑われる

ズレの話で象徴的なことがあった。日本でも結構話題になったアレだ。

『BRUTUS』特別編集 増補版 台湾(マガジンハウスムック)

「台湾で日本の仕事をしていくにあたって面白かったのは、やっぱり日本人からすると台湾の何を求めていて、それを台湾人がどう解釈しているか、そこのズレなんですよね、面白いのは。そこを聞いたりしていて。ちょっと前に、『BRUTUS』の表紙が話題になったじゃないですか。あれはまさにこのことを言っている。

僕が日本人として台湾っていいなって思うことは、台湾人からは笑われるんです。僕が台湾ガイドブックとかを出したときに表紙がポスターになっていて、それが台湾のすごく昔からある文房具とか、それを僕は「ゴミシュラン」と言ったんですけど、台湾の田舎町のおばあちゃんがぼーっといて、やってるかやってないのかわからない雑貨屋さんに行って、ほこりまみれの雑貨とか漁る、そこでメイド・イン・タイワンの面白いものを見つけて、いえーい! とかやっているんですけど、台湾人には笑われるんですよ。何やってんの? とか。

でも僕はそういうのが好きで、例えばご飯屋さんとかのオレンジ色の器で魯肉飯ルーローハンをガッ! って食べるのがかっこいいと思って、台湾だけじゃなくて、映画で香港とかでもヤクザが食べるじゃないですか、紙の容器で。僕は単純にそれに憧れを持っていて。それが日本にはなかったりしたんですけど。『BRUTUS』の雑誌もそうだし、東京の蔵前で「台感」っていうお店をやったときに、プラスチックの器で魯肉飯を出したら、台湾人の女の子のスタッフから猛反発されて「やめてくださいよ。台湾にはちゃんとした器とかありますから、そういうの出してくださいよ」って言われたり。日本人が求めているのってあの台湾の汚い市場みたいなものなんです」

写真=iStock.com/KreangchaiRungfamai
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僕らは台湾、アジアに無意識に雑然としたものを求めてしまっている。それは僕らの身勝手な思いで、台湾の人からしたら、「自分の国だけ小綺麗にして、何言ってんだよ」と、迷惑そのものなのかもしれない。バンコクの屋台がなくなると言って嘆き悲しんでいる日本人の感情と同様に。

台湾は人との繋がりで成り立っている

「情に厚いっていうのと、ほんとコミュニティを大事にしている。つながりだったりとか。お金よりも人脈というか、人との関係性をすごく大事にしている。僕もコーディネートをやるにあたって、それだからこそコーディネートで成り立っているのはあるんですけど。別にいい話だから何でもとか、お金が動く話だからとかではなくて、すごく仲間意識があったりとか。

というのが一つと、SNSのリテラシーが高くて、最初びっくりしたのは、日本でまだFacebookが流行っていなかった2012年に、普通に台湾の田舎のおばちゃんもiPadを持ってて「さよなら」と言ったら、「あなたFacebookやってる? 友だち交換しようよ」とか言ってきてそれで友だちになったりとか、そういうリテラシーとかSNSに対しても意識高いなと思ったし、やっぱり人との繋がりといった部分で全て成り立っていると感じました。

でも、仲間意識が強い分、面倒臭い部分もあるんですよ。結構グループごとでいろいろあるし。そういうのがあるからむしろ僕は変にそこに入らないように移住しないでいたんです。「仲悪いのか。知らなかったごめ〜ん」みたいな。あんま入っちゃうとどっちかになってしまう。あとは距離感が良くも悪くも近い。台湾に4、5日間滞在するとき、一回はご飯を食べに行くじゃないですか。台湾人は一日だけではなく「明日はどうする? 一緒に行こう」となる(笑)。