1985年4月、大阪伊丹空港に降り立った私の所持金はわずか60ドル。当時、中国政府が厳しい外貨持ち出し規制を行っていたため、60ドルが海外持ち出しを認められる最高額であった。が、それでも1ドルで240円と両替できたから、私は所持金1万5000円で、伊丹空港に降り立つことができた。しかし、もしドル安の今、同じ金額の所持金で来日したら5000円未満となってしまう。

こんな体験もあって、本書を目にしたとき、思わず手を伸ばした。国際ジャーナリストである著者が、アメリカにおける豊富な人脈を活かして取材、執筆。著者は、金本位体制が終了した後、金という実物資産の裏づけのないまま基軸通貨であり続けたドルを「アメリカの力の幻覚だった」と一喝したうえ、「信用の失墜」という致命的状態にあるドルはこれからも安くなり続けると断言する。

さらに著者は近未来に起こりうる恐ろしいシナリオを描く。ある日、世界の人々が「ドルを基軸通貨として受け取らない」と言い出せば、ドルだけでなく、ドルに連動している世界の通貨も受け入れられなくなってしまうというのだ。これを、私が一介のジャーナリストの杞憂だと一笑できなかったのは、事実、すでにその前兆とも言える現象が見られるからだ。