今回の震災で、最も大きな被害を受けた産業は漁業だと私は考えている。亡くなった方の9割以上が津波による水死であり、津波で浸水した面積は約561平方キロ(国土地理院調べ)。単純計算で海岸線が幅1キロ、約500キロにわたって被害を受けたことになる。ここにある産業といえば、漁業・水産業。自動車や電子部品ではないだろう。

復興に際しては、まず資金を「何に使うのか」をきちんと議論しなければ始まらない。なのに、資金を「どう調達するか」という話ばかりが先行して、国民は増税を認めるか認めないかという“踏み絵”を強いられている。私なりに試算したところ、震災による被害総額のうち、50%が漁業・水産業。その復旧・復興を議論することなしに、震災からの復興について語ることなどできまい。かつての郵政民営化と同じくらい漁業について議論されてもいい。人々の関心を集めることの少ない分野とはいえ、知識のないまま国民が蚊帳の外にいていいわけがない。何も知らなければ騙されるだけだ。