息子を90歳まで生きさせるため、父親92歳、母親95歳まで死ねない
年金生活の夫婦と無職の息子という家族ですが、父親の年金額が比較的多く、特にぜいたくもしていないため、今でも収支は黒字です。父親が生きている間は一家の貯蓄は増えていきます。父親が亡くなった後でも母親が生きている間は父親の遺族厚生年金が受給でき、二人の生活費を賄えます。
貯蓄を取り崩していくのは、両親が亡くなった後からで、二人が長生きをするほど、長男の老後の資金状況は改善されます。
といっても、寿命ばかりは自分で調整できるものではありません。たとえ長生きしても、介護に費用がかかるようでは貯蓄を取り崩すことになります。「長生きが改善策です」とはファイナンシャル・プランナーの提案としては恥ずかしい限りです。
それでも父親が求めるので、シミュレーションの条件を変更してみました。両親が共に前出のケースよりも5年長生きした仮定(父親92歳、母親95歳で他界)でシミュレーションをすると、長男が今から50年近くたって90歳になっても貯蓄が枯渇しない結果となりました。
「てっきり私は長生きすると貯蓄が減っていくものだと思っていました」(母親)
私は説明しました。
「介護費用がかさむようなことがなければ、長生きするほど貯蓄は増えていきます」
実際、年金額が比較的多い高齢者の中には、老後も貯蓄を増やし続けている人も少なくありません。
「長生きするだけでなく、介護が必要にならないように体力づくりをすればよいわけですね」(父親)
「目標ができると、生活にも張りが出ますね」(母親)
ファイナンシャル・プランナーとしてはほめられた提案ではありませんが、両親が前向きになっていただければ、それもまたよしと思うことにしました。