コロナ感染者数を煽るマスコミが元凶「スタグフレーション」の懸念

こうした経済状況の中、日本で「スタグフレーション」が起こることを私は心配しています。経済が停滞する中でのインフレです。単なるインフレよりももっと悪質なインフレです。経済が停滞する中でインフレになるわけですから、なかなか不況から脱せられなくなる可能性があります。企業にとっても大変ですが、所得の二極化が進んでいる中では、低所得者層への影響は小さくありません。

図表2では、現金給与総額の数字も載せてあります。現金給与総額はひとり当たりの給与の総額ですが、今年3月以降前年比でプラスに転じています(2021年8月は+0.6%)。それまではコロナによる雇用環境の悪化でマイナスが続いていました。ただ、プラスに転じたといっても、その上昇幅は微々たるものです。

給与がほとんど伸びない中で、インフレ(悪いインフレ)が進むと、経済に良くない影響が出ることは容易に想像できます。

写真=iStock.com/lantapix
※写真はイメージです

こうした中、7~9月のGDPが11月15日に発表になりました(前四半期比マイナス0.8%、年率換算マイナス3.0%)。この期間は緊急事態宣言が出ていたこともあり、ほぼゼロか少しマイナスの成長率を予測したシンクタンクがほとんどでしたが、実際その通りでした。

ユーロ圏は、7~9月は年率で9.1%と比較的堅調な成長を見せましたが、米国は2.0%と成長率を前四半期の6.7%から落とし、中国も成長率を落としています。つまり、日本経済にとってとても大きな影響を及ぼす米国と中国の経済にここにきて少し陰りが出ているということです。

さらには、欧米では、コロナの感染が拡大しています。感染者数をそれほど気にしなくなっているとしても、米国では1日当たり10万人前後、英国、ドイツでも3万人前後の感染者が出ています。

日本は、今のところ、感染者数という点では、欧米よりも2ケタ以上少ない数で推移していますが、再度感染者数が拡大する可能性もあります。米国、英国、ドイツなどのワクチン接種率は日本と同程度だからです。

そうした場合、日本人は欧米人よりも几帳面ですから、感染者数をやはり気にするのではないでしょうか。今後、緊急事態宣言などを発出する場合には、感染者数自体は考慮に入れないという欧米同様の判断基準を採り入れることを政府は考えているようですが、実質的にはそうはならない可能性もあります。

ネックは、マスコミです。感染者数の増加を連日のように報道するようになると、これまでのように「自粛」が行われるに違いありません。そうなれば、経済成長も抑えられることとなりかねません。そして、スタグフレーションの脅威もあります。

作家・小松左京さん原作のドラマ「日本沈没」が人気です。ドラマの設定は日本近海の地殻変動が沈没の要因ですが、経済的な沈没が今後、本当にやってこないとも限りません。いずれにしても、発足間もない岸田政権の手腕が問われることになりそうです。

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