予選落ち症候群に苦しむ
このときに並の選手ならば、今のスイングを基にして飛距離を出す方法を求める。体の回転や腰のキレを鋭くしたスイングでヘッドスピードを上げる。パワーアップのための筋力トレーニングを行うといったことである。つまりは、「捨てる」のではなく、「加える」ことを行うのが普通なのだ。
しかし、トレーニングはしっかり行っているし、現状のスイングも可能な限り改善している。もはやそんなことでは外国人選手と肩を並べる飛距離は得られない。しかも世界のトップ選手たちはショットの精度も遥かにシブコを上回っている。ビシビシとピンにつけてくるのだ。
実際に2020年前半のシブコの海外成績は優勝争いをすることもなく、30位以内にも入れない。前年優勝した全英女子オープンは105位タイでの予選落ちという惨敗だった。
こうした成績からの反省からシブコは自分なりにスイングを変えていこうと一人で模索し始める。コロナ禍でコーチがアメリカの大会には入れない以上仕方がない。
ようやく後半になって光が見え始め、12月の全米女子オープンで3日目を終えて首位に立ち、優勝争いを演じたのである。とはいえ競り負けて4位に終わるが、このときにスイングを変えていく気持ちが固まったのかもしれない。
コーチからも離れ、孤独の戦いを選ぶ
新たにシブコが目指したスイングは、海外トップ女子プロのそれではなく、何と海外男子トッププロのスイングだった。全米オープンやマスターズなどを制したダスティン・ジョンソンなどが行っている「シャロースイング」である。
インパクトゾーンでヘッドが低く入って抜けるスイングで、フェースにボールが真っ直ぐ長く乗るため、飛距離も方向性も向上するという新打法である。
シブコはこの「シャロースイング」を行うために、スタンスを狭くして屈み込まないようにし、トップを小さくしてシャフトを左に向けるようにした。まさしくダスティン・ジョンソンのスイングであり、これまでのシブコのスイングとは明らかに異なるものである。
このスイングを身につける決断をしたシブコはコーチからも離れた。自分ひとりで完成させようとするわけだが、コロナ禍で孤独の戦いを強いられてきたシブコからすれば可能な決断だった。