そして現職閣僚でもう一人、苦しい選挙戦となっているのが、連立与党・公明党の斉藤鉄夫国交相だ。これまで斉藤氏は比例中国ブロック選出だった。

だが、19年の参院選で自民党の河井克行、案里夫妻が広島県選挙区の地方議員や有権者に計2900万円をばらまいた公職選挙法違反事件が起こった。法相まで務めた克行被告は、1審の有罪判決で議員辞職。そこに名乗りを上げたのが斉藤氏だった。広島3区で当選してきた克行被告は、約8万5千票を獲得していた。

議員辞職した河井元法相の広島3区 自民動かず、焦る公明

17年の衆院選で公明党が広島3区の比例代表でとったのは、約2万5500票。広島市議選などの結果からも公明党の基礎票は2万5千票とみられる。そこに6万票の上積みが必要で自民党の協力なくして、当選はない。

また、公明党の小選挙区立候補は原則、比例代表との重複立候補はしないので、斉藤氏は勝ち抜くしかないのだ。

最新の自民党の世論調査を見ると、斉藤氏が立憲の新人、ライアン真由美氏に大きな差をつけている。だが、今夏の世論調査ではライアン氏が僅差だが斉藤氏を上回っていた。

立憲の世論調査では、斉藤氏とライアン氏はまったくの横並びだった。公明党幹部は浮かない顔でこう話す。

「斉藤氏が勝つには自民党さんに頑張ってもらうしかない。だが、河井夫妻の事件があって正直、動きは鈍い」

自民党広島県連から河井夫妻の事件に関与した県議や市議らに対し、「一切、衆院選には関わるな」とお達しが出ているという。

「岸田首相も以前、河井夫妻の事件に関係した地方議員は処分という趣旨の話をしている。公明党が何を言っても動きようがありません。岸田首相が手のひら返しで斉藤氏を応援しろと言っても、やる気はしませんね。有権者の目線も冷たいです」(自民党の広島県議)

だが、斉藤氏も黙っていることもできず、河井夫妻の事件に関与した地方議員にも声をかけて応援を要請するという歪な展開になっている。

立憲幹部は自信ありげに言う。

「自民党は動いていない。それで公明党は必死になっており、政権与党の足並みが乱れている。ライアン氏は広島3区で長く活動しており、国交相を新人が破るという大番狂わせも十分、可能性がある」

広島3区からは他にも日本維新の会が新人の瀬木寛親氏、「NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で」の矢島秀平氏、無所属の大山宏氏と玉田憲勲氏も立候補を表明している。広島3区は中選挙区時代、岸田首相の地元でもあった。

そこで指導力を発揮できなければ、「自公政権に亀裂が入りかねない」(自民党幹部)という声もでている。

(AERAdot.編集部 今西憲之)

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