学びや交流が生まれる仕掛けのある校舎

開校して3年の真新しい校舎。入り口すぐの階段を上がった先には、3階まで吹き抜けになった広いホールが広がっていて、開放感が溢れていました。ガラス張りの図書室の前には、カラフルな椅子とテーブルが置かれたラーニングコモンズ。反対側には畳敷のスペースが。また3階に続く宝塚ばりの大階段は、プレゼンテーションの舞台にもなるなど、生徒たちが思い思いの場所で過ごしながら多様な学びや交流が生まれる仕掛けが随所にあります。

筆者撮影
生徒たちが思い思いの場所で過ごせるラーニングコモンズ
筆者撮影
プレゼンテーションの舞台にもなる大階段

生徒たちは、学習指導要領の範囲を超えて、自由に学んでいますが、そのフィールドは、学校の中だけでは完結しません。まだ中学校しかありませんが、教員によって組織されたキャリア教育部から呼びかけて、東大金曜特別講座を受講したり、ビオトープを作るラボに国立環境研究所から科研費をもらって研究を進めたり、企業からのオファーをもらって、VRやARの実証研究を行ったり、さまざまな活動が行われています。

「実験的な学校なので、成長にいい影響があると判断したら躊躇せず取り組んでいきたいですね」と荒木校長。

親に求められる「子供を信じて見守る覚悟」

また、現在STEAM(Science、Technology、Engineering、Art、Mathematics)専用の校舎も建設中です。今も実験室やラーニングコモンズなど、生徒が自由に学べる施設はありますが、さらにこれを充実させて、生徒がサイエンスやアートなどの学びに集中できる環境を整えるのだとか。

授業でもプロジェクト学習がたくさん行われています。当然、生徒は失敗をしますが、教員は、それをどれだけ容認できるかが問われます。

実際、生徒の一人が、「この学校は安心して失敗させてくれるから、思い切っていろいろなことにチャレンジできる。学校が楽しくて仕方ない」と目を輝かせて話してくれた様子が印象的でした。こんな学校なら、自分のやりたいことを思う存分探究できそうです。

一方、子供を通わせているある保護者は、「先生は『もう少し、じっくり見守りましょう』と言ってくださるけれど、やる気が見えない息子を、親としてはどこまで見守っていればいいのか、ハラハラすることもある」とその胸のうちを語ってくれました。

子供の意欲をどうやって引き出すのか。学習者主体で自主性を尊重する教育ならではのジレンマでしょう。子供を信じて見守る覚悟が、親にも必要です。

「生徒たちが自ら考え、協働していくためには、生徒たちの考えを否定しないこと。誘導ではなく考えを引き出す関わり方をして、生徒の自由な発想を応援していきたいと思っています。中高は、子供たちが社会に接続をしていく大切な期間です。ある時に集中した経験は、他にも応用できます。できるだけ生徒の手にまかせていきたい」と荒木校長は熱く語ります。

「知的好奇心やチャレンジ精神に溢れた子供たちを歓迎している」ということですが、その学校に入るためには、厳しい受験勉強をしなくてはならないのが現実。

中学受験においても、知的好奇心やチャレンジ精神も含めて多面的に評価してもらえるように、入試の多様化が進むことを願います。