DHCテレビジョンは「不当判決」と反発

一方、DHCテレビジョンの山田晃社長は、「不当判決」と反発、賠償金の支払いも、謝罪文の掲載も突っぱねる構えだ。

ヘイトスピーチ対策法が施行されてから5年が経つが、DHCグループのヘイトは確信犯で、悔い改めるつもりはなさそうにみえる。

なにしろ、DHC創業者の吉田嘉明会長が率先して、コリアンヘイトをネットで発信する愚挙を続けていたのだ。とくに、最近のサントリーやNHKをターゲットにしたヘイトスピーチは度を越していた。

DHCは、全国の多くの自治体と健康増進や地域活性化などを目的に連携協定を結んでいるが、さすがにどの自治体も容認できなくなり、相次いで協定の解消に動いている。

韓国では、DHC商品の不買運動が広がり、賠償判決と相前後して韓国事業の撤退に追い込まれている。

MXは「コメントは控える」と沈黙

判決は、番組制作会社のDHCテレビジョンに対して行われたものだが、それは番組を放送したMXの責任を糾弾したものにほかならない。

東京メトロポリタンテレビジョン=2020年11月29日(写真=Suicasmo/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

ところが、MXは、「本件に関しては当社としてのコメントは控えさせていただく」と、沈黙を決め込んだ。MXとしては、すでに決着済みとの認識で、古傷に触られたくないとの思いがうかがえる。

民放各局も、まるでひとごとのようだ。

だが、司法の判断が下された以上、放送界は耳を傾けないわけにはいかない。

「ニュース女子」の本質的な問題は、放送法の制約を受ける地上放送のテレビ局が堂々とヘイトやデマを流した点にある。

放送法は、番組編集に当たって「公安及び善良な風俗を害しないこと」「政治的に公平であること」「報道は事実をまげないですること」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」を規定している。

これらに照らせば、「ニュース女子」の当該番組は明らかに放送法に抵触するし、DHCテレビジョンの見解も放送法を逸脱している。番組の出演者も、放送法違反に加担したことになる。

MXは、自主的に定めている「放送番組の基準」で「すべての人の人権を守り、人格を尊重する。個人、団体の名誉、信用を傷つけない。差別・偏見の解消に努め、あらゆる立場の弱者、少数者の意見に配慮する」とうたっているが、「ニュース女子」の放送は、まさに天にツバを吐くようなもので、「自殺行為」にほかならなかった。

大スポンサーに弱い民放

もう一つ、注目しておきたいのは、MXとDHCテレビジョンの親会社であるDHCとの関係だ

当時、DHCは、MXの最大のスポンサーで、16年3月期の売上高164億7000万円のうち、DHCとの取引は23億5900万円(14.3%)に上っていた。これでは、MXが、DHCの意向を斟酌せざるを得ないことは想像に難くない。子会社のDHCテレビジョンが「ニュース女子」について「問題なし」との見解を出してしまったため、MXは対応に苦慮したことだろう。大スポンサーに弱い民放の体質が浮かび上がった典型例といえる。

もっとも、MXによると、現在はDHCの広告出稿は皆無で絶縁状態になっているという。