問題視された米軍基地反対運動の報じ方

問題になった「ニュース女子」の番組を再現すると……。

放送されたのは、2017年1月2日。長谷川氏の司会のもと、「沖縄緊急調査 マスコミが報道しない真実」などと題し、沖縄・高江の米軍ヘリパッド建設をめぐる反対運動を報じた。

この中で、軍事ジャーナリストを自称する井上和彦氏のルポと、それを受けた経済ジャーナリストを自称する須田慎一郎氏ら出席者のコメントが飛び交った。

「沖縄の大多数の人は、米軍基地に反対とは言っていない」
「反対派の暴力行為で、地元の住民でさえ現場に近づけない」
「反対派が救急車を止めて、現場に急行できない事態が続いていた」
「逮捕されても生活の影響が少ない65歳以上を、過激デモに従事させている」
「韓国人はいるわ、中国人はいるわ、何でこんな奴らが反対運動やっているんだと地元の人は怒り心頭」

といった具合だ。

さらに、反対運動に参加している人たちを「テロリスト」にたとえ、「組織に雇われ、日当をもらっている」などと指摘。在日韓国人で人権団体「のりこえねっと」の辛共同代表を名指しし、「反対運動を先導する黒幕の正体?」などのテロップを流した。

米軍基地反対運動に対する批判一色である。

写真=iStock.com/fKuroda
※写真はイメージです

裏付け取材のない報道

「ニュース女子」の問題は、その一方的内容の報道にあった。

番組を見れば、大半の人は、番組が放送の基本原則を踏み外し、ニュースや報道の名に値しない内容だったことがすぐにわかるだろう。

そもそも、一番肝心な沖縄の民意について認識が誤っていた。当時、米軍基地に反対する翁長雄志氏が知事に選ばれ、直近の衆院選や参院選ではすべての議席で米軍基地反対を主唱する候補が選ばれたことからもわかるように、米軍基地に反対する県民が多数派であることは明らかだった。

次に、ルポと言っても名ばかり。井上氏は現地には行っておらず、反対運動に批判的な住民の意見や感想を紹介しただけで、反対運動に参加している人たちには取材していない。意見が対立する案件は、賛否両論を紹介するという放送の基本が無視されていた。

また、番組の出席者も、持論を語るだけで、論拠の大半は伝聞や憶測にすぎなかった。さらに、「黒幕?」とされた「のりこえねっと」が提供した費用は、現地報告を行う「市民特派員」に対して支払う「交通費」と明示されており、反対派を雇う「日当」ではないことも明白だった。

一連の報道は裏付け取材のないものばかりで、番組そのものが悪意に満ちており、視聴者を曲解させようとする意図が透けてみえるのだった。