投資ノウハウよりも、儲け話に騙されない知識が必要
「儲かります、なんて書いてあるチラシを見る時には、こういう小さなところから見た方がいいの。
ほら、この隅の方に小さく、『最初に講習料として30万円かかります』って書いてあるでしょう。小さく書いてあるのは、最初に30万円出さなくてはいけないことをあまり知らせたくないのね。だから、月に30万円の収入のところはこんなに大きく書いてあるのに、最初に30万円払わなくちゃいけないことは小さい」
「ほんとだ、小さい字でもちゃんと読まないと、騙されちゃうね」
「そうね。申し込んでしまった後に、『知りませんでした』って言っても、『チラシにちゃんと書いてありますよ』と言われちゃうからね」
今、子供にお金をあげて株を買わせてみるというような投資教育が流行っています。それはそれでいいのですが、その前に、投資の裏側に潜んでいるリスクを知るということが大切ではないかと思います。
「ちょっと変だな」と思ったら、むやみやたらに投資に乗り出さない。そういうことを日常の中で教えてあげておけば、子供は無茶な投資もしないようになるでしょう。
自己責任の時代を生きていかなくてはいけない子供にとっては、投資のノウハウも必要かもしれませんが、大前提として「儲け」に足をすくわれない知恵が必要でしょう。
「アメ」を賭けてブラックジャック
9歳の千晶ちゃんの家では、日曜日の晩に時々、お父さんとお母さんとお兄ちゃんと4人でトランプをします。
千晶ちゃんができるのは「7ならべ」か「神経衰弱」ですが、その日はお母さんとお兄ちゃんが用事ででかけていたので、お父さんと二人。お父さんが、新しいゲームをやろうと言い出しました。
それは「ブラックジャック」というゲーム。配られたトランプの数字の合計が21を超えてはダメで、21に近い人が勝ちというゲームです。
お父さんが親になり、自分と千晶ちゃんに2枚ずつトランプを配りました。配られたカードの数を足して自分が勝つと思ったらそこでストップと言い、これでは勝てないと思ったら、カードを追加できます。ただし、21なら勝ちですが、22以上になるとアウトとなります。
「どうせやるなら、本格的に何か賭けてみよう」
そう言うと、お父さんは台所からアメを持ってきて、千晶ちゃんに10個渡しました。「千晶がもし勝ちそうだと思ったら、自分のアメを賭ける。もしいい数字になって絶対に勝てると思ったら、アメを2個でも3個でも出して、当たればそれだけの数をお父さんからもらえるけれど、外れたら、そのアメはお父さんがもらうことにしよう」