ネットいじめの解決策としてネットを使わせないのは誤り

【竹中】ネズミ講のことで僕が覚えていることがあって、JUNETでネズミ講が流行っていた時に、「ネズミ講とは何か?」という解説がまず流れてくるんですよ。そして次に「今、こういうことが流行っているから気をつけろ」というのも流れてくる。まさに村井さんが言った通りです。悪いことをしようとする人たちがいる一方で、それに対抗しようという人も出てくる。しかも、その対抗しようとする人の情報は、ウィキペディアのようにエビデンスが示されたものなんです。だから、その両方の情報を受け止めたうえで、普通の人だったら当然、ネズミ講なんてやめた方がいいと思うのでその面をきちんと捉えると安心できるんですけど、「加入者を100人作ったら、メッチャ儲かるじゃん」みたいな側面にひかれる人はそっちに行っちゃうわけです。

【村井】さっきの新聞記者さんの話に戻ると、新聞記者さんに言われて自分で調べたら、目につくのが「気をつけろ」という情報ばかりだったので、俺は少し楽観的になった。たぶん、新聞記者さんはJUNETでネズミ講が流行っていて、これを問題視しようとして俺のところに連絡してきたんだと思う。でも、連絡してきた時には、すごいスピードで「気をつけろ」に変わっていた。だから、悪い情報の広がり方は速いけれども、良い情報の広がり方も速いんだということ。これはサイバーセキュリティの分野でも有効だと思うんだよね。世界中で助け合えるし、多くの人が応援してくれる。そして今は、そういう仕組みがすでにできあがっていると思う。

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【竹中】SNSでの誹謗中傷が原因で自殺者が出てしまった事件など、今はインターネットのデメリットが目立っていますけど、それはメリットを忘れてデメリットばかりを受け止めてしまうからだと思うんです。本当はメリットとデメリットをきちんと理解して、判断してもらえればもっと違った捉え方ができるんじゃないでしょうか。

【村井】この問題でいちばんいけないのは、例えば「あるクラスでいじめが起きた」「それはネットを介して起こった」「だから、ネットを使うのをやめよう」という流れ。ここで「ネットを使うのをやめよう」というのは答えじゃないんだよね。答えは「いじめが起きないクラスを作る」こと。もっと全体を見なくてはいけない。

【竹中】現在のSNSは超先鋭的な人が何十人かいるんです。その人たちの声がすごく大きい。そして、いろいろなレトリックを使って攻撃するのがとても上手い。だから、攻撃された人はすごく深刻に受け止めてしまうけれども、実は約1億2000万人いるにほんのなかで、数百人とか数十人に言われているだけなんです。本当に少数。だから、気にする必要はない。そして、もし気になるようだったら、自分の周りにいる人に聞いてみればいい。「SNSでこう言われているんだけど、大丈夫かな?」って。それで、だいぶ変わります。周りの人に聞くことによって、全体の構造やそもそもの意味が見えるようになるから。