安倍氏は「高市氏が当選する」と考えているわけではない

その観点から「野田氏出馬」の影響を考えてみる。野田氏の得票は議員票、地方票あわせて50票に満たないかもしれない。しかし、その票によって河野氏が過半数、つまり384票に届かなくなる可能性が高まる。つまり野田氏の出馬は、本人の意思とは関係なく「河野総裁阻止」の役割を果たす。

今回の総裁選の裏テーマは、党実力者による露骨な「河野つぶし」でもある。

安倍氏は、自身が首相の時に外相、防衛相などで重用はしてきたが、「脱原発」路線や、女系天皇の容認にも含みを持たせるなど、河野氏のリベラルな政治姿勢は受け入れがたい。パフォーマンス色の強い政治手法にも違和感を持っている。

安倍氏は今回、いち早く高市氏の支援を打ち出した。安倍氏は、自身の政治路線の継承を明言する高市氏が当選すると考えているわけではなく、決選投票によって岸田氏が浮上することを着地点と見ている。

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麻生氏は「50代の河野氏に権力が移るのは早すぎる」

安倍氏の「反河野」は日を追うごとに鮮明になっている。これは安倍氏にとって「天敵」でもある石破氏が河野氏支援に回ったことで決定的になった。さらに河野氏支援に回った小泉氏が「他陣営から露骨な引きはがし、働きかけがある」などと、安倍氏が事実上のオーナーである細田派などの動きを批判するような言動も、しゃくに障っている。

安倍氏は、小泉氏の父・純一郎氏が総裁になった20年前の総裁選を念頭に「純一郎さんが総裁になれたのは清和会(現・細田派)が全力で応援したからなのに」と周囲に不満を隠さないという。

河野氏が所属する麻生派のリーダー・麻生太郎財務相は本来ならば河野氏を全面支援するところだが、出馬は容認しつつ、「支持」と明言はしない。50代の河野氏に権力が移るのは、あまりに早急だと受け止めているのだ。

もう1人、安倍、麻生氏とともに「3A」を構成する甘利明・党税調会長も麻生派幹部なので本来なら河野氏を推してもおかしくないが、「菅(義偉)首相がダメだと、たたかれた一番の原因が、ワクチンの迷走といわれているのに、ワクチンの担当大臣の評価が上がるとは、よくわからない」と河野氏を痛烈に皮肉っている。