利権構造がないから外資の流入が進んだ

近年、急速に価値を上げている地方の一つが、北海道のニセコだ。スノーボードを楽しむのに、1シーズンで何回も行っている。とにかく雪質が素晴らしい。世界でも屈指のパウダースノーを楽しめる雪質の良さが、海外のスキーヤーたちに知られたのが20年ほど前。平地に上質な粉雪が積もるニセコは、世界でも極めてレアな場所らしい。やがて、世界に知られるスキーリゾート地へと発展していった。

撮影=柚木大介
実業家の堀江貴文さん

外国人の移住や外資系の投資が進み、ニセコの地価は高騰した。2016年には標準地の地価公示値上がり率が19.7%を記録した。これは当時の全国トップだ。

かつてニセコは、北海道の中でも打ち棄てられていた「陸の孤島」だった。そのため地元の利権構造とは無関係で、海外からの投資がスムーズに参入できたのだ。パークハイアットニセコなど、海外富裕層向けの設備も増えた。寂れていたからこそ再興のチャンスをとらえられた、痛快な例だろう。

街にはスキーシーズン以外にも、海外のお金持ちが集まるようになり、近年は面白い人たちが交流を深める、東アジアの新しいサロン的な役割も果たしている。コロナ禍で外国人たちはぱったりと途絶えてしまったが、広いゲレンデを独占して、パウダースノーを好き放題に楽しめるチャンスといえる。ニセコへスキーに出かけSNSで発信すれば、世界のスキー愛好家がフォローしてくれる可能性がある。

いずれ、外国人客は戻ってくる。不要不急が避けられているいまこそ、世界に見つけられた地方都市の魅力を、体感してみる好機だろう。

地方に眠っている大きなポテンシャル

ニセコ以外にも、世界に向けてアピールできる地方の観光都市は少なくない。

徳島の阿波踊りや、九州の五島列島のリゾート開発、宮古島のダイビングなど、地方に昔から続いている観光業が、広く海外で知られ関心を集めている。

中でも、グルメの力は見逃せない。肉に魚に野菜、寿司に鍋にラーメン……。日本ほど、都会だけでなく全国各地にうなるほど美味しい名産グルメが存在している国は、めったにない。世界中を旅した僕が言うのだから間違いない。「小麦の奴隷」や、長野県東御市八重原で田植えから製造した純米大吟醸「想定外」「想定内」など、グルメの力を活かした地方発信のビジネスを、僕らも手がけている。

まだまだ地方には、ポテンシャルが眠っていると感じる。ニセコのように埃をかぶっているだけで、適切な手入れと投資を行えば、成長を遂げる都市はいくつもある。

僕たちの宇宙事業が根づいたことで、「ロケットの町」として全国区の知名度を得た、北海道の大樹町も成功例だ。辺鄙な地方の町ではいまこそ、不要不急に求められるヒットの法則が、発掘されるのを待っている。