自社の人と財産に焦点を絞れ
多くの企業にとって「人」は最も重要な資産である。また、サールマンによれば、出資する価値のある企業かどうかを判断する際、多くの投資家がまず見るのがその企業の「人」がどうであるかである。「人は決定を下す。ビジネスプランは下さない」と、彼は言う。グリーンも同じ考えだ。「外部の人間にとって、重要なのは『この会社はこれをやれるか。これを実行できるか』だ」と言う。
価値が創造されるのは適切な人間が適切な機会をとらえたときであり、ビジネスプランはその両方を伝える必要がある。だからこそ、ビジネスプランでは自社の最も重要な人材を大きく取り上げよう。そして、彼らがこの事業を実行するのに最も適任である理由をはっきり説明しよう。以前それをやったことがあるとか、すばらしい専門知識を持っているといったことを伝えるのである。
もちろん、これは絶対的なルールではない。企業によっては、特にある程度、基盤の確立した会社の場合は、技術や発見といったもののほうが人材より重要なことがある。だが、その場合も同じアドバイスがあてはまる。
「何であれ、自社の最も価値のあるものに焦点を絞れ」である。
そもそも事業を始めるということは、試行錯誤するということだ。プランを読む人たちは、とりわけ新しい冒険的事業のスタート時には、書き手がすべてを把握していることなどを期待してはいない。
それよりも、提供しようとしている製品なりサービスなりを製造、または販売する最善の方法をどう見極めるつもりかを説明するべきだ。「目標は、次に何をするべきかを判断するための道筋としっかり構成された一連の実験について伝えることだ」と、サールマンは言う。
「最高のビジネスプランは、『我々はXとYとZをこのような順序で行います』と説明するものではない。『次に何をやるべきかを見極めるためにこれらのことを行います。そして、実行するのはこれらの人々です。彼らは以前それをやったことがあるからです』と説明するものだ」。この実験をこのような方法で行いますとだけ記すのではなく、その実験から生まれるデータをどのように使うつもりなのかも必ず説明しよう。
あらゆることがプランどおりにいく可能性はゼロであると、経営者なら誰もが言うだろう。ビジネスプランを柔軟性のあるものにしておくためには、リスク評価を盛り込むのがひとつの方法だ。多くの既存企業がこれを大規模にやっているが、これは新設企業にとっても重要な方法だ。シナリオについて検討したことを伝え、その事業に伴うさまざまなリスクをどのように管理するつもりかを説明するものでなければならないと、サールマンは言う。
もちろん、あらゆる選択肢を前もって説明するのは現実的ではないし、可能ですらない。状況の変化に対処する能力を示すことに焦点を当てよう。