勤労世代の減少で地方経済縮小、黒字企業の休廃業、食糧難まで…

日本が抱える課題はもはや社会保障制度や医療・介護体制だけでなく、あらゆる分野に及んでいる。勤労世代の急速な減少は人手不足を生み、企業の生産活動を揺るがす。一方で勤労世代は同時に活発な消費者でもあることから、こうした年代の若者が少なくなった地方では地域経済が縮小して企業活動が不活発となり、都市部への人口流出を招くこととなる。その結果、農業までが疲弊して耕作放棄地が拡大を続けており、近い将来、深刻な食料難に陥ることが懸念される。

勤労世代の減少は、“職人技”や営業上の人脈といったビジネス上の“引き継ぎ”を困難にさせる。中小企業では、後継者不足などを理由とした事業承継の断念が過去最多を更新し続けており、黒字企業の休廃業・解散件数が目立つ。

そればかりではない。勤労世代の減少は「社会の若さ」を奪う。競争相手が減ることで切磋琢磨する機会が失われ、イノベーションや芸術・文化が生まれづらい状況が広がる。高齢化した消費者は「長い老後生活」に備えて貯蓄に励むようになり、経済成長を妨げる大きな要因となっている。

警察官や自衛隊員は不足し、介護離職者は増大する

さらに深刻なのが、警察や自衛隊といった分野を含む公務員の不足だ。生活に密着した行政サービスの維持が困難になると見込まれるエリアが広がり始めている。もし防災や治安に穴が開くようなことになれば、国民の「安全・安心」は大きく揺らぐだろう。医療・介護、電気、水道、郵便といった公的なサービスを担う企業や病院、施設も同じだ。施設網の保守・管理やサービスを担うマンパワーを維持するコストが経営に大きくのしかかってくる。

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80代以上の高齢者の増加は、一人暮らしや高齢者のみの世帯を増やしている。買い物や通院といった移動が困難な人が増える一方で、人口減少に伴う需要の減少が公共交通機関の経営に打撃を与えており、日常生活がままならない人や孤独化する人を増やしている。

高齢者世帯の増加は高齢者同士の介護や、勤労世代の夫婦が同時期に2人以上の老親の世話をするといった状況を生み出し、介護離職も増えている。介護離職者の増大は、企業の存続すら危うくする。

認知症や運動機能の衰えた国民の増大は、都市機能の風景を変える。高齢ドライバーによる交通死亡事故が社会問題化しているが、電車やバスの乗降に時間がかかるようになるし、街中の階段や段差は車いすでの移動には不都合だ。バリアフリーの徹底が求められるが、住民の高齢化で地方税収は伸び悩み、こうした事業に充てる予算の確保を難しくしている。