起業後、まったく売れなくてもへこたれなかったワケ

起業を意識しながらSNSを見てみると、女性の起業家が意外と多いことに気づいた。しかし、「人の役に立ちたい」という思いばかりが先走って、具体的にどんな仕事なら起業できるのかがわからない。自分の何を武器としてどう売り出せばいいのか、笹木さんはしばらく悩み続けた。

PR塾の講義の様子(写真提供=LITA)

「知人に相談したら、PR活動で実績を出しているんだから、その分野で起業すれば人の役に立てるんじゃないかと言われたんです。PRが起業に結びつくほどのスキルだとは思っていなかったのですが、それならやってみようと」

さっそくブログやSNSで「PRコンサルティングをします」と発信すると、読者の1人から申し込みが。その人に喜んでもらえたことが自信になり、退職・独立の決心を固めた。

とはいえ、最初から順調だったわけではない。コンサルの依頼はポツポツとしか来ず、自ら設定した定員を満席にするために、友人にコーヒーをおごって参加してもらったこともあった。それでもくじけなかったのは、これまでの経験で「どんなにいい商品でも最初は売れなくて当たり前」と知っていたから。

「自分が売れなくても挫折感はなかったですね。それよりも、売れないものを売れるようにしていこうとしているんだから、覚悟を持って長所をきちんと伝え続けなければいけないと思っていました」

「社長にはついていけない」スタッフの離職が相次いだ

地道なPR活動に加え、丁寧なコンサルティングも評判となって顧客は徐々に増え、笹木さんはやがてマンツーマンではなく講義形式の「PR塾」をスタート。さらに、企業向けのPR代行事業もスタート。そのうち個人事業では追いつかなくなり、事業拡大を見据えてスタッフを採用し始めた。

個人起業家から経営者へと成長を遂げたわけだが、ここで大きな壁にぶつかる。スタッフの離職が相次ぎ、最終的には9割もの人が辞めていってしまったのだ。顧客の役に立とうと熱くなるあまり、スタッフをまったく顧みなかったのが原因だった。

笹木さんは当時の自分を「常に指示を出すばかりで感謝の言葉をかける余裕もなかった」と反省する。スタッフとは仕事への思いを共有するどころか、顧客へのコミットに全力を注ぐため、雑談する時間さえ惜しいと思っていたという。そうした態度に、辞めていく人の中には「社長にはついていけない」と言った人もいた。

「でも、その頃は辞めていく人が悪いと思っていたんです。何がそんなに不満なんだろう、根性がないんだろうなって。そんな私の態度に、とうとう頼りにしていた役員までが辞めると言い出して……。恥ずかしい話ですが、それでようやく目が覚めました」