「政府が楽観的な見通しに固執し、対策を怠ってきた」と毎日社説
8月14日付の毎日新聞の社説は「コロナの危機管理 『根拠なき楽観』排さねば」(見出し)と訴え、「事態がこれほど深刻になったのは、政府の危機管理に大きな欠陥があったからだ。そのツケが、国民に重くのしかかっている」と菅首相に噛み付く。大きな1本社説である。
さらに「最大の問題は、政府が当初から楽観的な見通しに固執し、対策を怠ってきたことだ」と追及する。やはり菅首相の問題は「根拠なき楽観」だろう。
毎日社説はその弊害をこう指摘する。
「感染収束後に予定していた旅行需要喚起策『Go Toトラベル』を前倒しで始めた。人の移動は感染リスクを高めるにもかかわらず、旅行しても構わないという誤ったメッセージを送った」
矛盾した方針で、緊急事態宣言下の東京五輪の開催と同じである。
「今夏の第5波では、高齢者でワクチン接種が進んだことから、重症者数はそれほど増えないと甘く見ていた」とも指摘し、「実際には、接種が進んでいない世代で感染が急拡大し、40~50代を中心に重症者が急増した。危機管理の基本である『最悪の事態の想定』がなされていなかった」と解説する。
菅首相は危機管理というものを真剣に考えているのだろうか。
毎日社説は「政府が楽観的な見立てを改めないままでは、失敗を繰り返すことになる」と警告するが、その通りだ。
「専門家の知見を軽視する姿勢も変わっていない」
毎日社説は書く。
「第5波で政府内には手詰まり感が漂う。国民に自粛疲れや『コロナ慣れ』が広がり、協力が得にくいと見ているからだ」
沙鴎一歩は自粛疲れやコロナ慣れだけではなく、最大の原因はオリンピックの開催強行にあると思う。感染力の強いデルタ株の流行による第5波の到来が分かっていたにもかかわらず、世界最大の祭典を開くことで、人心を高揚させ、人の移動を招き、感染への注意を鈍らせた。
毎日社説もこう指摘している。
「専門家の知見を軽視する姿勢も変わっていない。東京オリンピック開催をめぐっても表面化した」
「政府分科会の尾身茂会長は、パンデミック下での開催は『普通はない』と述べ、無観客にするよう提言した。だが、菅義偉首相は土壇場まで観客を入れることにこだわった」
菅首相の要望通りに無観客ではなく、多くの観衆を入れての開催だったら、どうなっていただろうか。「自粛は不要」というアナウンス効果が大きく出て、さらに感染がさらに広がっていたのではないだろうか。
毎日社説は指摘する。
「こうした事態を招いたのは、対応を誤ってきた政府自身だ。危機管理には国民の信頼が不可欠だが、首相は人々の不安にきちんと向き合ってこなかった」
いまからでも遅くはない。独りよがりの悪癖をあらため、この秋までの首相の在任期間を全力投球で務め上げ、真の仕事師としての姿を後進に示してほしい。