売り時例②「創業社長が退任した時」

もうひとつ、投資先の創業社長が交代するというケースを考えてみましょう。

市川雄一郎『投資で利益を出している人たちが大事にしている45の教え』(日本経済新聞出版)

あなたがハイテク系ベンチャーX社の株式を上場時に買ったとします。同社の創業社長であるY氏は強烈な個性とリーダーシップでX社の成長を引っ張ってきたオーナー経営者です。上場後も業績は絶好調で、同社株を持ち続けることに何の不安もありませんでした。

ところが、X社はある日突然、M&Aによって別の会社に買収されることがわかりました。創業社長のY氏も退任し、自分の持ち株も全て売却して、X社の経営から一切身を退くというのです。さて、あなたならどのように判断するでしょうか?

この場合も、要はあなた次第なのですが、基本的にはここは手仕舞いにする、つまり売却を考えるタイミングでしょう。なぜならば、会社の顔のような存在であるカリスマ型の創業社長が退く場合、その後の経営戦略だけでなく、企業文化や企業風土まで大きく変わってしまうことがままあるからです。「看板は同じでも、中身は全く別の会社」になってしまえば、当初の応援条件から外れることになります。

投資先を選ぶ条件は、業績データのように数字で計測できる定量的なものだけでなく、むしろ、数字では捉えきれない定性的なものの方が多いかもしれません。「好きなお店がなくなる」「創業社長が退く」といった応援条件の変化は、その典型例です。

応援条件を決めるうえで大事なことは、複数の条件を設けることです。ただ、あまり多過ぎると、話がややこしくなって、判断に迷うことにもなりかねません。その点は要注意です。何個くらいが適切かは人それぞれで、一概には言えませんが、最低限の条件さえ決めておけば、売買のタイミングを検討することは比較的簡単にできると思われます。

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