この問題を多くの人に試してみると、簡単にできる人と、なかなかできない人がいて驚かれるかもしれません。

答えは、87番です。

西剛志『なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか?』(アスコム)

これは、駐車場の数字を180度回転しないと答えられない問題です。

見える角度を想像で変える。ここにも脳のバイアスが作用してきます。

男性と女性の脳の使い方で、大きな差が認められているのが「メンタルローテーション」、つまり空間認識能力です。メンタルローテーションは、二次元または三次元のものを、頭の中で回転する能力で、男性のほうが比較的得意だといわれています。ここにも脳のバイアスがあるのです。

なぜ男女でこのような脳のバイアスの違いが生まれたのかというと、これもはるか昔の男女の役割に基づくようです。

太古の昔、男性の仕事は狩猟。獲物を探し、捕獲したら外敵に横取りされないように安全かつ確実に持ち帰らなければなりません。そのためには、最短ルートを脳内に描ける能力が必要だったのです。

メンタルローテーションの男性優位を立証するものとして、よく例えられるのが車の運転です。例えば、車線変更が苦手という女性は少なくありません。

駐車場「タイムズ」を運営するパーク24が車の運転技術に関するアンケートで、「苦手な運転技能は何ですか?」と質問したところ、「車線変更」と答えた女性は男性の3倍、「合流」と答えた女性は男性の3.2倍もいたそうです。

性差による「脳のバイアス」も

ドイツのルール大学ボーフムのクラウディア・ウルフ博士が行った実験でも、運転技術に関する男女差が明確になりました。

アウディA6(セダン)という車を使って、3つの方法(頭から/バック/縦列駐車)で駐車し、正確性と時間を計ったところ、女性は男性よりも平均して20秒多く時間がかかったそうです。そして、時間をかけても、男性のほうが正確性が高かったといいます。

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このことが示すのは、運転の上手下手というわけではなく、男性と女性とでは、頭の中で視点を反転させる処理にバイアスがかかるため、見えるものが変わってくる可能性です。

昔、クライアントの営業職の方から「お客様にデスクの反対側から資料をお見せするときに、説明がいつもスムーズにできないんです。逆から資料を見ると、何と書いてあるかわかりづらくて……」という相談を受けたことがあります。

メンタルローテーション力が高いと、資料を逆さにしても簡単に読めますが、低いとなかなか読めません。そこで、私がアドバイスしたことは、「相手の隣りや斜めに座れるような円形のテーブルがあるカフェやラウンジを探してみてください」ということでした。