今後、回復ペースは鈍化する恐れ

その中で、外需依存度が高く、国内では不動産価格の高騰によって家計の債務問題などが深刻化する韓国からは急速にドル資金が海外に流出したのである。最終的に韓国は米連邦準備理事会(FRB)からのドル資金の融通によってドル不足を克服した。

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当時、アジア通貨の取引に従事していたベテランのファンドマネージャーは、「昨年春の韓国の金融市場における流動性の枯渇は、1997年秋のアジア通貨危機の発生による市場混乱を彷彿とさせるものだった」と話していた。

少し長めの目線で韓国経済の先行きを考えると、感染再拡大や韓国銀行が示唆し始めた金融引き締めによって、韓国経済の回復ペースは鈍化する可能性がある。すでに中国経済の回復力に息切れ感が出始めていることも見逃せない。

今すぐ、昨春のような混乱が起きるとは考えられないが、万が一の展開に備えて韓国の政府内に日韓の通貨スワップ再開を目指す動きが出始めている可能性はある。それも文氏がわが国との首脳会談を目指した理由の一つだろう。

日本は是々非々の姿勢で臨むべきだ

文大統領の訪日が見送られはしたものの、報道されている内容では文氏は対日関係の修復に依然として意欲を持っているようだ。今後も文氏はわが国との首脳会談などを目指すことによって経済運営や対北朝鮮政策の推進に関する成果を世論に示そうとする可能性がある。

わが国に求められることは、これまで同様に、韓国に対して是々非々の姿勢で臨むことだ。歴史問題などに関しては、過去の国家間の合意内容に従った対応を、韓国に、冷静に求める。

その一方で、わが国は国際社会への責任を果たすために輸出管理を適切に運営しつつ、民間企業の意思決定に基づいた経済取引を推進すればよい。それは対韓国だけでなく、対中国や、対台湾などとの関係にも当てはまる。

つまり、わが国に求められることは、現時点で比較優位性を発揮している高純度の半導体部材や半導体の製造装置、産業用ロボットなどの工作機械を生み出すモノづくりの力を磨き、その優位性を引き上げることだ。世界経済のデジタル化は加速している。