※本稿は、末冨芳・桜井啓太『子育て罰 「親子に冷たい日本」を変えるには』(光文社新書)の一部を再編集したものです。
子ども・家族への少なすぎる政府投資
(前編から続く)
「子育て罰の厳罰化」を行う菅政権のままで、日本は大丈夫なのでしょうか。図表1は、財務省の研究機関である財務総合政策研究所で、東京大学の山口慎太郎教授が報告した資料から引用したデータです。政府による家族関係支出が増えれば、出生率が増えることをあらわしています。
日本政府の家族関係支出の対GDP比は国際的に見て非常に少なく、少子化も深刻な状況であることが確認できます。この状況を鑑みるに、日本政府が取るべきなのは児童手当の特例給付の廃止ではなく、所得にかかわりなく子育て支援全般を手厚くする政策ではないでしょうか。あらゆる子どもに基礎的な児童手当を支給しつつ、児童手当と教育の無償化を低所得世帯に手厚く加算し、高校無償化や大学無償化の所得制限緩和をしていくことが必要なのです。
児童手当の特例給付廃止に否定的なのは、私だけではありません。財務省・財務総合政策研究所で少子化対策について提言している研究者たちの多くが同じ意見です。先のデータを発表した山口慎太郎教授は、東京新聞のインタビューで次のように答えています。
〔「世界的に見ても貧弱な少子化対策 日本は子育て支援増額を」(東京新聞2020年11月30日)〕
児童手当の特例給付廃止は、超少子化を加速させる
また、中央大学の山田昌弘教授は、同じく東京新聞に次のようにコメントしています。
とくに、家族経済学の第一線の研究者である山口慎太郎教授は、記事の中で「日本は世界的に見ても少子化対策にかけるお金が貧弱」と指摘しておられます。今回の児童手当の特例給付廃止は、そもそも貧弱な子育て世代への財源を削ってしまうという意味で、少子化対策に逆行するどころか、超少子化を加速させてしまう愚策です。