リニューアルは「食材ごと」に行う

さらに、ハンバーガーを構成するバンズ、パティ、ミートソースそれぞれで、リニューアルするタイミングをずらしているという。

「一斉にリニューアルに踏み切らない最大の理由は、客離れを回避するためです。もし仮にバンズの味が不評であれば、最悪元の状態に戻せばいい。パティもミートソースも同時にリニューアルすると変数が多くなってしまい、不評の原因を究明しづらくなります。

直近ではテイクアウト需要の増加から、2019年7月にはパン生地の保水性を高め、しっとりとした食感が長持ちするようなバンズにリニューアルしました。そして2020年7月に、今度はミートソースのリニューアルを行っています。味に深みやコクを加えるために、液体塩麹や酢などの隠し味を入れ、また玉ねぎや挽き肉といった具材の大きさにこだわり、ソースだけでも食感を得られるように工夫を凝らしました」

「手間と暇」で飽きない味を提供する

他方、ハンバーガー業界はマクドナルドやロッテリア、バーガーキングなどの競合がひしめく激戦となっている。

モスバーガーはどのような差別化を意識しているのだろうか。

筆者撮影
近年、鳥貴族など異業種からハンバーガー業界へ参入する動きも見られるが、「業界全体が盛り上がり、成熟するほどモスバーガーの良さが際立つ」と安藤さんは言う

「モスバーガーの強みは、47都道府県全てに店舗を有していて、全商品同じ値段で提供していること。北は北海道、南は沖縄の離島まで約1300店舗あり、どこに行ってもおいしさを想起してもらえるのは、モスバーガーだからこそできることです。また、調理における『手間と暇』のバランスを大切にしています。モスバーガーらしい手作り感が損なわれないような製造工場での加工や、店舗での調理におけるひと手間など、毎回食べても飽きないおいしさを体現するためには、両者における絶妙なバランスが重要になってくるわけです。定番かつシンプルながら、モスバーガーならではの独創的な品質を届けられるのは他社が真似できないことだと自負しています」