世の商売は「カレーを売るか、シャンパンを売るか」

ところで、世の中に商売は2種類しかありません。カレーを売るか、シャンパンを売るか。このいずれかです。

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「突然何を言い出すのか」と思われたことでしょう。こうした極論で人目を引くのはビジネス書の常套手段とはいえ、私も作家のはしくれ、決して根拠のないデタラメを書いているわけではありません。

詳しく説明しましょう。世の中の商売の基本形は、カレーならカレーという、ある決まった商品(サービスの場合もあります)をつくって供給するものです。

スーパーに行けば一定の値段で一定の商品が売っていますし、ちょっとがんこなラーメン屋も、売っているのは店主の心意気ではなくメニューに並んだ一定の商品です。これを便宜的に「カレー的」商売と呼びます。

いっぽう、ホストクラブが客にシャンパンを入れさせてグラスのタワーに注ぐのは、シャンパンそのものではなくホストの魅力にお金を払ってもらうための仕組みです。

大道芸人が集める投げ銭、あるいはYouTuberが再生回数を稼いで得る広告収入なども、基本的には同じです。これを便宜的に「シャンパン的」商売と呼びます。

つまり、商売とは大まかに「商品をつくり供給する」ものか「芸をする」ものに分かれているということです。

芸ごとは目立つが、成功への道は狭く厳しい

カレー的商売とシャンパン的商売のあいだには、両者の中間的な商売があり、また同じ商売でもスタイルが違えば、どちら寄りに位置するかも変わると考えてください。

例えば「教師」であれば、学校法人や地方自治体に勤め、所定の課程を履修させることを使命とする人は比較的カレー的でしょうし、予備校で引く手あまたの人気講師は、カリスマ性を発揮して受講者を集めるという意味で、よりシャンパン的です。

私がここで何を申し上げたいのかというと、「多くの人々が興味を抱きがちなシャンパン的商売は経済のメインストリームではなく、成功への道は狭く厳しい」ということです。

確かに芸ごとは、刺激や潤い、慰めを求める人々の欲望に訴えますから、とにかく目立ちます。でも、芸で食べ物はつくれませんし、ビルを建てられるわけでもない。

経済の根幹を支えるのはいつの時代もカレー的商売であり、そこで生み出された余剰で回る、おまけのような存在がシャンパン的商売なのです。