自分を最優先にすることが大事

共感とは、相手に共感する過程で自分の深い感情も一緒に刺激されるものである。相手に共感しているうちに、いつの間にか過去の自分の傷とも向き合うのだ。こういう場合、相手に共感するよりも先に、自分の傷のほうへ集中すべきである。自分の心の声に優しく耳を傾けてあげるべきである。

チョン・ヘシン『あなたは正しい』(飛鳥新社)

常に自分を見失ってはいけない。いかなる時でも、自分が最優先である。逆にそれが、他者への共感においても成功の鍵になる。共感することは、救急診察室の当直医のように、義務的に行うべきものではない。心の傷を手当てするのに、そうすべき理由はひとつもない。義務になってしまったら、自分が先に倒れてしまうだろう。

誰かに共感することよりもさらに難しいのが、「私」に集中し自分に共感することである。大概はここでつまずき、倒れ、正しく共感できなくなり、他者への共感もうまくいかなくなる。相手に集中しようとするあまり、自分の感情を抑え込み、自分を見つめることをせず、感情労働に苦しめられ、結局は何もかもうまくいかなくなるのである。

共感は、自分を犠牲にして誰かを支えることではない。そのような方法では相手を最後までそばで支えることなど不可能である。やがてふたりとも、底なしの沼に沈み込んでしまうだろう。共感は、自分を大切にできて、初めてなんの抑圧もなしに実現するものなのだ。誰かに共感するというのは、初めは自分の心まで重く複雑になっていたものが、やがてはふたりとも身も心も軽くなり、自由になることである。

誰かに共感しているうちに、自分の傷が予想外にさらけ出されて痛い時もあるが、それは同時に自分自身も共感してもらい、傷を治癒する絶好の機会だ。それは、共感する人がもらえる、特別なプレゼントになるだろう。

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