本来なら高校3年生の秋にプロテストを受けるはずだった
意外なことに、明愛も千怜も中学時代は陸上部に所属していた。明愛はサッカーにも精を出し、父・雄士も弟・光太も一緒になって、みんなで走ったり、トレーニングしたり、ご飯を食べたりの合宿のような生活を楽しみながら送ってきたという。
楽しむことが最優先。ゴルフの試合に出て、姉妹の成績に差が出てしまったとき、父親は「必ず成績が悪かったほうに声をかけた」。
高校進学を控えたころ、明愛も千怜も、陸上やサッカーをやめてゴルフを選び、「ゴルフが強い高校に入りたい」と自ら意志を固めた。その意を汲んで、両親は2人をゴルフ強豪校である埼玉栄高校へ導いた。
コロナ禍で本来なら高校3年生の秋に受けるはずだったプロテストが今春以降へと延期され、2人が描いていた人生プランはすっかり狂ってしまったが、「親としては最悪の事態も考慮に入れた」という両親の思いもあり、姉妹は武蔵丘短期大学へ進学。
すると2人は「身体のことを学んで自分の肉体管理は自分でやりたい」「アスリートとしてやっていくためには、自分で身体のコンディションを整えたい」と、大学生活にも意欲を見せ、卒業証書を手にすることを目指している。
彼女たちのプロテスト挑戦と合格は、そんな学業追求との同時進行の下で達成されたものだった。
「これだけは絶対に守りなさい」と強調してきた4つの教え
おのずと育った強く優しいプロゴルファー
姉妹にゴルフを「させようとしたわけではなかった」という父・雄士は、その後も、ゴルフ指導はレッスンプロに任せ、自身は「教えない」「強いない」「怒らない」、そして「楽しめ」という姿勢を貫いてきた。
だが、姉妹が幼いころから「これだけは絶対に守りなさい」と強調してきたものがあるそうだ。
「『岩井家の4つの教え』っていうのがあるんです。人にされて嫌なことはするな。一人ぼっちの人がいたら仲間に入れる。困っている人がいたら助ける。幼い子や女の子、弱い人には優しくする」(明愛・千怜)
4つの教えを守りながら成長した姉妹は、だから優しい子になり、優しいからこそ心根が強い子になった。