「でも、私たちは泣かなかった」
プロテストのプレー中、窮地に陥ったり、きわどいパットに遭遇するたびに「支えてくれた家族や友達、高校の監督、大学の先生の顔が浮かんで励まされた」と姉妹は口をそろえる。いいプレーができるのは、応援してくれたみんなのおかげだと感謝している。
その謙虚さも、岩井家の家訓とも言える4つの教えから生み出されたものではないだろうか。そして、熾烈な競争を勝ち抜き、3段階のプロテストに勝ち残り、勝ち抜き、合格できたことは、4つの教えを守りながら培ってきた強いメンタリティのたまものだ。
姉妹そろっての合格を知って思わず泣き出した母を、明愛と千怜は優しくハグしながら感謝の気持ちを伝えた。
「でも、私たちは泣かなかった」
心が強いから泣かなかったのだろうか。きっとそれだけではない。2人の胸の中には確固とした理由があった。
「プロテストは通過点であってゴールじゃない」
「合格したことは、すごくうれしかったけど、泣くほどのことを成し遂げたわけじゃない。ここからがスタートですから」(千怜)
「私もすごくうれしかったけど、プロテストは通過点であってゴールじゃない。海外メジャーに勝って夢をかなえるまで、涙はとっておきたい」(明愛)
父も、そして母も、ゴルフを強いず、教えず、人としての道だけを教えてきたら、双子の姉妹はゴルフ道を突き進む、強く優しいプロゴルファーになり、これからますます羽ばたいていく。
その様子を眺めながら、彼女たちを育んだ「4つの教え」を、ときどき唱えてみたいと思う。