その3 世間の評価のために趣味をしない

人の役に立つのではなく、自分のために純粋に楽しむことをお薦めしましたが、人の役に立とうとする誘惑以外にも、趣味の世界には自己顕示欲を満たすための誘惑があります。

安藤 俊介『怒れる老人 あなたにもある老害因子』(産業編集センター)

その典型的なものが「賞」です。写真、絵画、陶芸、俳句、小説といった応募することで○○賞が狙えるようなものがあります。まさに「賞」は自己顕示欲を満たすにはぴったりの場です。○○賞を取ることで多いに自己顕示欲が満たされるからです。

今ある趣味は誰かに評価されたくて続けているものなのか、自分だけでも楽しめればそれで十分なのか、どちらでしょうか。

SNSへの投稿も同じことが言えます。自分が純粋に楽しむだけではなく、その楽しんでいる姿を見てもらいたいとSNSに投稿します。SNSは承認欲求のメディアとも揶揄やゆされますが、多くの投稿は自分を見てほしい! と評価を求めて投稿しているのであって、自分の備忘録のために投稿している人は少数派です。

もし誰かの評価がなければ楽しめないようなものであれば、それは誰かのためにやっているといっても過言ではありません。その誰かがいなければその趣味に意味がなくなってしまうのですから。

世間から評価をされなくても自分が没頭できるものは何でしょうか。純粋な興味から始めたものが、いつの間にか自己顕示欲を満たすことがその趣味を続ける目的になっていないか考えてみましょう。

その4 話が面白い人よりも話が聞ける人になる

今の世の中は話をしたい人の方が圧倒的に多く、話を聞きたい人は圧倒的に少数派です。

そしてこのことに気づいていない人が多すぎます。

これは話の面白い人がモテると勘違いをしている人が多いことからわかります。

いかに雑談をするか、しゃべり上手になるかといった本が何冊も出版されているにも関わらず、聞き上手になるための本は思いの外少ないです。あるとしてもカウンセラーやコーチなど、人の話を聞くことを生業にする人向けの本だったりします。

実はカウンセラー、コーチがクライアントから恋愛感情を持たれることはよくあります。だからこそ、そこの線引きをしておかないと、大きなリスクになることがあるので、気をつけましょうというのが常識です。

なぜ、カウンセラー、コーチが恋愛感情を持たれるかと言えば、それは話を聞いてくれるからです。人は話を聞いてもらえることで、「自分が受け入れられた」と思うからです。カウンセラー、コーチ側はクライアントが話しやすくなるよう受け入れることをしているのですから、そう思われることは成功ではあるのですが、恋愛対象に誤解されないように十分に注意し配慮します。

しかし、クライアント側からすればそこを誤解してしまうことがあるのです。

人気者になるために聞き役にまわりましょうということではないのですが、話が面白い人よりも、話が聞ける人の方が、ずっと需要があるのを知っておくことは、自己顕示欲を手放す上でのヒントになるでしょう。